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固定残業代について行うべきこと

(質問)
 当社では、45時間分の固定残業代を支払っていました。
 しかし、今となって退職した従業員から、固定残業代の説明は受けておらず、実際に支払われてもいないと言われました。
 会社としてはどのように対応すべきだったのでしょうか。

(回答)

1 固定残業代について想定されるリスク
 残業代を請求された場合に、固定残業代が認められるか否かは最終的な支払い額に大きな影響を及ぼします。
 固定残業代が認められた場合には、固定残業代相当額はすでに残業代として支払ったという扱いになります。
 一方、固定残業代が認められない場合には、残業代について全く払っていないという扱いになるだけでなく、本来固定残業代とされている部分についても基本給として扱われたうえで残業代の計算がされることになります。
 したがって、請求される残業代はかなり高くなってしまいます。
 このようなことを回避するためにも、固定残業代の有効性はきちんと確保しておく必要性があります。

2 固定残業代の有効性
 固定残業代が残業代として有効に認められるためには、労使間において固定残業代についての合意がなされていることに加えて、賃金を支払うにあたって、給与明細等にて、基本給と残業代部分とが明確に分かれていることが要求されています。
このようなことが要求されているのは、従業員が自己の労働に対して残業代が支払われているかを確認することができるようにするためです。
 固定残業代を定めることで、所定時間内の時間外労働をした従業員に対しては合意した固定残業代を支払えば、残業代の未払いにならないため、労務管理に資するというメリットがあります。
 もっとも、所定時間(相談者の場合は45時間)を超過する部分の残業代については、きちんと残業代を再計算して支払わなくてはならないため、その点は注意してください。

3 労働条件通知書の重要性
 固定残業代については就業規則に定めたうえで、個別の労働者に応じて金額を定めることになると思われます。
 この際に当該従業員の労働条件の内容を客観的に示すものが労働条件通知書です。
 法律上、労働条件通知書は交付義務が定められているのみで、従業員の署名押印は要求されていません。
 しかし、残業代請求をされる際には、労働条件通知書の交付がなかったとして、合意の内容を争ってくるパターンがあります。
 したがって、そのリスクに備えて、従業員に労働条件通知の内容を確認してもらったことを証する署名押印をしてもらうことが一般的です。

4 事前の対応の重要性が高い
 以上のとおり、固定残業代の有効性については、事前に対応していないことにリスクが非常に大きいです。
 経験上、裁判上の手続で残業代請求をされた場合、かなりの事案で会社にとって不利な結論となっています。
 そのため、固定残業代の運用や、雇用契約書、就業規則や労働条件通知書について見なおしてみるのはいかがでしょうか。
 具体的な内容等の相談は是非専門家にしてください。