子の看護・介護休暇の制度が新しくなると聞きました。どのような点が変わり、会社として何をしなければならないのでしょうか。
(回答)
1 子の看護・介護休暇とは?
育児介護休業法は、従前より、育児休業や介護休業に加えて、子の看護や介護の必要がある労働者について、申出により休暇を取得することのできる「子の看護・介護休暇」の制度を定めてきました。
このうち、子の看護休暇は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者について、1年度において5労働日を限度として、傷病にかかった子の世話または疾病の予防を図るために必要な子の世話をするために休暇を取得することができるとするものです。
他方、介護休暇は、要介護状態の家族をもつ労働者について、同じく1年度において5労働日を限度として、家族の世話を行うために休暇を取得することができるとするものです。
労働者からこれらの休暇の申出があった場合、事業主は、一定の労働者について労使協定を結んだ場合を除いて、その申出を拒むことはできません。もっとも、休暇中の給与については、無給とすることができるものとされています。
2 法改正で何が変わる?
この子の看護・介護休暇の制度について、この度、法改正がされ、令和3年1月1日から改正法が施行されることとなりました。
今回の法改正の最大のポイントは、事業主に対し、子の看護・介護休暇を、時間単位で取得させる義務が定められたことです。これまで、平成28年の法改正により、これらの休暇を半日単位で取得させなければならない義務が課せられてきたところ、労働者が更に小刻みに休暇を取得できるよう、より柔軟な制度に改められた形です。
また、それと併せて、これまで、1日の所定労働時間が短い労働者については半日単位で休暇を取得することはできないとされていたところ、この度の法改正により、すべての労働者が時間単位で休暇を取得できることとなりました。
3 企業としてなすべきこと
このような法改正を受け、事業主としては、就業規則の内容を改正法に即したものへと改める必要があります。仮に子の看護・介護休暇の定め自体を置いていない場合には、この機会に定めを置くようにしましょう。これらの休暇も就業規則の絶対的記載事項である「休暇」にあたるものですから、その付与要件、取得に必要な手続及び期間について、就業規則に記載しなければなりません。
これに加え、今回、時間単位での休暇の取得が可能となったことから、休暇の残日数・時間を正確に把握することができるよう、適切に管理していく体制を整えることも求められているといえます。
そして、なにより、労働者がこの制度を実際に利用することができるよう、労働者に対し制度の周知をしていくことが大切です。
4 持続可能な企業をめざして
新型コロナウイルスの流行により、社会や経済のあり方が大きく揺らいでいる今、あらゆる局面で「持続可能性(サステナビリティ)」という考え方がより注目を集めるようになってきています。
少子高齢化が進み、人手不足が深刻な状況となってきている現代社会において、介護などの理由による従業員のキャリアロスへの不安を払しょくし、従業員が安心して働き続け、十分に能力を発揮することのできる環境づくりをすることは、企業としての持続可能性を高めるための重要な取組みの一つといえます。
そのような観点から、法令で課された義務の履行をすることはもちろんのこと、企業としての経済性と両立する範囲内で、より柔軟な制度構築をすることも検討されてもよいかもしれません。
労働者の育児や介護にまつわる制度の構築や規定の定め方にお悩みの場合は、ぜひ弁護士にご相談されることをお勧めします。