先日、飛行機でのマスク着用が問題となった事件がありました。
マスクを付けなければ飛行機に乗れないのでしょうか?
(回答)
1 安全阻害行為
この事件は,マスクを着用しなかったので飛行機から降ろされた,と思っている方もいるかもしれませんが,そういうわけではありません。
マスクを着用するよう要請されて,それを拒否した男性が,客室乗務員やほかの乗客に対して大声をあげたりしたことが原因のようです。
つまり,航空法による,航空機内の秩序を乱すなどの安全阻害行為があったので,乗客を降ろしたことになります。
飛行機でマスクを付けることはあくまでも要請であり,乗客にお願いしてもマスクを付けなければそれ以上の措置をとることはできません。フェイスシールドなどの代替物を用意するということはあり得るとは思いますが。
海外では,公共交通機関を利用するときに,マスク着用を義務化したり罰金をとったりしているところもありますが,日本ではマスク着用は義務ではないです。
それから,航空会社の約款によっては,他の旅客に不快感を与え,又は迷惑を及ぼすおそれのある場合や,会社係員の業務の遂行を妨げ,又はその指示に従わない場合には,旅客の搭乗を拒否したりできる,と定められている場合もあります。
しかし,約款を根拠としても,マスクを付けていないだけで,搭乗を拒否できるとまではいえないのではないでしょうか。
乗客が大声をあげるなどしたことは,航空の安全を阻害するので,乗客を降ろした措置としては問題なかったと思います。
しかし,航空会社としても,マスク着用を拒否している相手に対して,何度も要請を繰り返したことも,少し疑問に思います。
マスク着用を求めるのであれば,マスク着用が義務であることを明確にして,搭乗前にマスクを着用しているか確認すべきです。着用できない理由があれば,その理由をあらかじめ聞いておくなどしておく必要があったのではないかと思います。
そうでないにもかかわらず,飛行機内でいきなり着用を求めて,拒否しているにもかかわらず何度も要請するのは,トラブルの種にもなりかねません。
乗客の側にも問題はあったと思いますが,航空会社の対応も完璧だったとはいえないと思います。
2 今回の緊急着陸で,飛行機を降ろされることになった人の責任
ところで,今回の緊急着陸で,飛行機を降ろされることになった人は,どのような責任を負うのでしょうか?
刑事上の責任だと,威力業務妨害罪にあたりえます。
それから,民事上では,損害賠償責任が発生します。
飛行機が遅延したことによる損害,それから,他の空港に緊急着陸しているので,燃料費や人件費なども余計にかかっているのではないでしょうか。
場合によっては,飛行機が遅れたことで大事な予定に影響が出てしまった他の乗客から,損害賠償を請求される可能性も否定できません。
これらを航空会社が実際に請求するかどうかは,航空会社の判断次第によりますが。
航空会社の請求は認められるか否かですが,機長の判断が不適切だったと言われることはないとは思います。
ただ少し気になるのが,マスク着用が義務ではないにもかかわらず何度もマスク着用を求めたことがきっかけでトラブルが生じたことを考慮すると,乗客側に一方的に非があったとまではいえないとも思われるので,いくらか減額される余地はあるのではないかと思います。