飲食店でクラスターが発生した場合に公表する事項について基準はあるのでしょうか。
(回答)
1 公表基準
令和2年2月に、厚生労働省が公表基準を示しています。
厚生労働省の公表基準によると、「感染者に接触した可能性のある者を把握できていない場合」には、店名を公表することとなっています。
しかし、不特定多数の者が出入りして足取りが把握できていなくとも、公表していない例はあるのではないかと思います。なぜかというと、自治体によっては、店名を公表するにあたって、店からの同意を得ることも基準に加えている場合があるからです。
同意をしてくれる店もあるかもしれませんが、風評被害を恐れる店側としては、同意をしない可能性もあります。同意がないとすると、実際は感染者に接触した可能性のある者を追えていないにもかかわらず、店名を公表できないことになります。
その店に行ったことがある人がいたとしても、自分がコロナウイルスに感染している可能性があることに気づいていない人もいるかもしれません。
それから、店名を公表しない理由としては、ほかにも、「店に来るのは常連客が多く、足取りが追えているので、公表しなくても感染拡大のリスクが低い」からという場合もあります。
でも、このようなお店だって、全ての客を把握しているわけではなく、追えていない人もいるのではないかと思います。その場合に店名が公表されないと、感染の可能性に気づかないまま他者と接触してしまうことになります。
なので、令和2年7月に、追加で厚生労働省から通達が出されました。これは、感染者に接触した可能性のある者を把握できていない場合には、店の同意がなくとも店名公表ができると明確にしたものです。
でも、さきほどと同じように、感染者に接触した可能性のある者をどの程度把握できなければ公表するのかとか、店の同意を得ることにするのかなど、自治体の裁量に任せられているのが現状であり、自治体によって判断が異なります。
同じ自治体でも、この場合には公表しないのに、うちの店は公表するということで、不公平感は出るのではないかと思います。
公表されることで風評被害が生じるので、できるだけ公表をとどめようという自治体の意図も分かりますが、再び感染が広まっている状況では、個人のプライバシーや営業権よりも、国民の生命を守ることがより重要視されるべきだと思います。
不特定多数の人が出入りする場所でクラスターが発生した場合には、同意の有無にかかわらず原則として公表することにするなど政府が明確な基準を出すべきではないでしょうか。