平成31年4月1日から、有給休暇の取得が会社に義務付けられると聞きました。会社はどんなことをしなければならなくなるのでしょうか。
(回答)
1 年次有給休暇の取得が義務に
厚生労働省の調査によると、平成30年の日本の有給取得率は平均51.5パーセント。大手旅行代理店の調査では、3年連続で世界最下位の取得率となっており、その取得率の低さが問題視されて来ました。
そのような状況を受け、今般、働き方改革の一環として、有給休暇の取得促進のため、年次有給休暇の取得が義務化されることになりました。この義務は、平成31年4月1日から、すべての企業に対し課せられることになります。
2 会社はどのような義務を負う?
まず、会社は、従業員に対し、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に、取得時季を指定して、5日の有給休暇を取得させなければならないことになりました。これまで有給休暇は従業員からの請求によって付与するものでしたが、今回、新たに、5日については会社から付与することが義務となったのです。この時、会社は、従業員に対し、取得時季についての意見を聴取しなくてはなりません。
また、時季指定の対象となる従業員及び時季指定の方法を就業規則に記載すること、年次有給休暇管理簿を作成し3年間保存することも義務付けられました。
なお、この制度の対象となるのは、年次有給休暇が10日以上付与される従業員です。管理監督者や有期雇用労働者も含まれるため、注意が必要です。
3 義務違反には罰則も
これらの義務に違反した使用者は、労働基準監督署の指導を受けることになります。また、有給休暇を取らせなかった従業員1人あたりにつき、使用者に対し30万円以下の罰金を科す規定も設けられています。
そのため、有給休暇の取得を拒否する従業員がいる場合、会社としては、業務命令を発し、強制的に有給休暇を取得させることが必要となります。
また、今回の制度は、従業員に有給休暇を現実に取得させることまでを求めています。そのため、使用者が時季指定を行ったにもかかわらず従業員が勝手に出勤した場合でも、使用者の法律違反となってしまいます。従業員が業務命令に従わず出勤した場合の対処として、懲戒処分を考えることもありうるでしょう。
4 義務化への備え
このような制度への備えとして、会社には、従業員ごとに有給休暇の消化日数をしっかりと管理することが求められます。まずは従業員(特に管理職)に対し新しい制度を周知し、管理しやすい制度を整えることが大切です。
また、業務への影響を最小限に留めるためには、計画的付与の制度を導入するなど、有給休暇の運用のあり方を改めて検討することも必要となります。例えば、業務の繁閑に差がある企業であれば、閑散期の年休消化を促進し、繁忙期の年休消化を事実上圧縮させる運用を図ることなどが考えられます。
5 生産性UPを目指し運用方法の検討を!
働き方改革は「休み方改革」とも言われ、今、企業の健康経営の必要性が声高に叫ばれています。
また、同時に、「従業員が出勤はしているものの、心身の不調により十分にパフォーマンスを発揮できない状態」、いわゆる「プレゼンティーイズム」が会社に与える損失の大きさも注目されているところです。従業員に適切に有給休暇を取らせることで心身をリフレッシュさせ、作業効率をアップさせることは、そのような会社の損失を防ぐことにも繋がると考えられます。
実際にどのような方法で有給休暇を取得させるのが適切かは、会社によって様々です。自社に適した運用の方法など、有給休暇をめぐる問題への対処にお悩みの場合は、弁護士などの専門家にご相談されることをお勧めします。