当社では、60%の株式を保有する株主Yが死亡し、相続が発生しました。
当社はどのように対応すれば良いでしょうか。
(回答)
1 相続人による権利行使がなされないリスク
中小企業では、いわゆるオーナーが過半数の株式を保有しているケースもよく見られるところです。
このような状況で、株主がすでに死亡した以上、その相続人による権利行使がなされないと、株主総会の定足数をクリアできなくなるなどのリスクが生じる場合もあります。
2 遺産分割協議が未了の場合の議決権行使
Yの相続人間で遺産分割協議が未了であるなどの理由で相続人が名義書換請求を行わない場合は、株式は法定相続分に従って相続人が共有する状態になります。
共有にかかる株式については、相続人間で権利行使者を1名決め、会社に通知しなければ、原則として権利行使できません(会社法第106条本文)。そこで、貴社とすれば、相続人が複数いる場合は、相続人と早急に協議を行い、権利行使者を定めて、会社に通知してもらう必要があります。
3 相続人間の協議がまとまらない場合のリスク
相続人間の協議がまとまらず、権利行使者の決定ができない(権利行使者の通知がない)場合でも、会社が同意すれば例外的に権利行使できるものとされています(同法第106条但書)。
しかし、会社の判断で相続人のうち一部の者のみによる権利行使を認めることは、相続人間で株主権の行使につき対立があるような場合には、トラブルになるリスクもあるので、なるべく相続人全員に共同で議決権行使してもらうことが適切です。
4 回答
貴社は、Yの相続人間で遺産分割の合意がなされず、協議により権利行使を決定してもらえないリスクがあります。その場合は、株主総会の定足数を満たさなくなることにもなりかねません。
そこで、貴社とすれば、定款で相続人に対する株式の売渡請求(同法第174条)を規定して、会社が株式を取得できる途を開いておくか、会社の経営法務リスクマネジメントの一環として、事前に、Yに貴社の株式を誰に相続させるかの遺言を作成するよう準備しておく必要があります。