月別アーカイブ: 2018年5月

株式の相続に対する会社の対応

(質問)
 当社では、60%の株式を保有する株主Yが死亡し、相続が発生しました。
 当社はどのように対応すれば良いでしょうか。

(回答)

1 相続人による権利行使がなされないリスク
 中小企業では、いわゆるオーナーが過半数の株式を保有しているケースもよく見られるところです。
 このような状況で、株主がすでに死亡した以上、その相続人による権利行使がなされないと、株主総会の定足数をクリアできなくなるなどのリスクが生じる場合もあります。

2 遺産分割協議が未了の場合の議決権行使
 Yの相続人間で遺産分割協議が未了であるなどの理由で相続人が名義書換請求を行わない場合は、株式は法定相続分に従って相続人が共有する状態になります。
 共有にかかる株式については、相続人間で権利行使者を1名決め、会社に通知しなければ、原則として権利行使できません(会社法第106条本文)。そこで、貴社とすれば、相続人が複数いる場合は、相続人と早急に協議を行い、権利行使者を定めて、会社に通知してもらう必要があります。

3 相続人間の協議がまとまらない場合のリスク
 相続人間の協議がまとまらず、権利行使者の決定ができない(権利行使者の通知がない)場合でも、会社が同意すれば例外的に権利行使できるものとされています(同法第106条但書)。
 しかし、会社の判断で相続人のうち一部の者のみによる権利行使を認めることは、相続人間で株主権の行使につき対立があるような場合には、トラブルになるリスクもあるので、なるべく相続人全員に共同で議決権行使してもらうことが適切です。

4 回答
 貴社は、Yの相続人間で遺産分割の合意がなされず、協議により権利行使を決定してもらえないリスクがあります。その場合は、株主総会の定足数を満たさなくなることにもなりかねません。
 そこで、貴社とすれば、定款で相続人に対する株式の売渡請求(同法第174条)を規定して、会社が株式を取得できる途を開いておくか、会社の経営法務リスクマネジメントの一環として、事前に、Yに貴社の株式を誰に相続させるかの遺言を作成するよう準備しておく必要があります。

下請け従業員の労働災害

(質問)
 当社は建設業を行っており、A社を下請としていたところ、A社の従業員Yが労働災害で死亡しました。
 当社は、Yの遺族に対して、損害賠償責任を負うのでしょうか。

(回答)

1 実質的な使用関係とは
 建設業では、元請、下請、孫請といった重層的な請負契約関係が見られます。
 元請企業と下請企業労働者の間には、本来は契約関係がありませんが、その間に、「実質的な使用関係」、「直接的又は間接的指揮監督関係」が認められる場合には、元請企業の下請労働者に対する安全配慮義務が認められます。

2 実質的な使用関係等が認定されるファクター
 具体的には、次のとおりです。
 ア 現場事務所の設置、係員、係員の常駐ないし派遣
 イ 作業工程の把握、行程に関する事前打合せ、届出、承認、事後報告
 ウ 作業方法の監督、仕様書による点検、調査、是正
 エ 作業時間、ミーティング、服装、作業人員等の規制
 オ 現場巡視、安全会議、現場協議会の開催、参加
 カ 作業場所の管理、機械・設備・器具・ヘルメット・材料等の貸与・提供
 キ 管理者等の表示
 ク 事故等の場合の処置、届出
 ケ 専属的下請関係か否か
 コ 元請企業・工場の組織的な一部に組み込まれているか、構内下請か等が検討されることになります。

3 回答
 貴社が現場事務所を設置して、従業員を工事現場に派遣するなどしていたり、貴社がYに対して、作業方法、作業工程について指示をするなど、Yに対して事実上の指揮・監督を行っているなどの事情があれば、貴社のYに対する安全配慮義務違反が認められるリスクは高いといえます。
 貴社は、A社との間で労災があった場合の責任負担割合の事前合意をするか、労働災害総合保険等の労災上積保険の加入を検討すべきです。

懲戒処分を行う手続の注意事項

(質問)
 当社では、従業員が遅刻、早退を繰り返すので、減給か出勤停止の懲戒処分を行いたいと考えています。
どのような手続で懲戒処分を行えば良いでしょうか。

(回答)

1 懲戒処分の種類
 懲戒処分としては、戒告、譴責、減給、出勤停止、降職・降格、諭旨解雇、懲戒解雇があります。
減給については、労働基準法第91条が就業規則の減給の制裁を定める場合は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1か月分の賃金の総額の10%を超えてはいけないとされています。
一方、出勤停止はその期間についての法律上の規制はありません。しかし、長期間にわたる出勤停止は、懲戒事由とのバランスにおいて客観的合理性・社会的相当性を欠くと判断されるリスクがある点に注意する必要があります。

2 非違行為発生時の対応
 従業員が非違行為を行った場合、企業は、次のような段階的対応を行っていくことになります。

 ア 事実関係の調査と証拠化
   後で裁判等で懲戒処分の合理性・相当性を争われるリスクがあるので、当該従業員や関係者の当該従業  員の非違行為に関する事実の書面化や、場合によっては会話の録音等が必要になります。
   
 イ 本人の弁明
   不利益な処分を課す以上、本人の弁明を聴くことは、誤った処分を防ぐためにも大変重要です。

 ウ 段階的な処分
   懲戒処分は段階的であることが要求されます。重大な非違行為でない限り、懲戒解雇を行うことはでき  ず、イエローカードが必要ということです。
   企業は、証拠により認定された非違事実を踏まえて、本人に弁明の機会を与えつつ、段階的にきちんと  懲戒処分を行って、本人に反省の機会を与えるとともに、教育する必要があります。

3 回答
 貴社は、従業員の非違行為の事実の確認、非違行為の就業規則の懲戒事由の該当性の確認、当該従業員の弁明、過去の懲戒処分の量定との比較等を踏まえて、必要に応じて懲戒委員会(ケースに応じて弁護士等の第三者も加えても良い。)で審議して、合理的かつ相当な懲戒処分を検討すべきです。

取締役の第三者責任リスク

(質問)
 当社は、製造業を行っていますが、業績が低迷し、債務超過となってしまいました。
 ただ、先月から展開している新製品が好調ですので、取引先に材料を発注し、事業を継続して挽回したいのですが、債務超過のまま事業を継続した場合、社長個人の責任が取引先から追及されることはないのでしょうか。

(回答)

1 取締役の第三者責任
 会社法では、取締役や監査役などの役員が、会社に対する義務に違反することをわかっていながら、もしくは、多少注意を払えば義務に違反することが容易にわかったにもかかわらず、義務に違反し、それにより第三者に損害を被らせたときは、その役員等は、連帯して、第三者に対し、損害の賠償をしなければならないとされています(会社法第429条第1項、第430条)。
 ご質問のケースの場合、債務超過の会社について、事業を継続することが、会社に対する義務違反となり、それにより取引先に損害を被らせた場合には、取締役等は、取引先が被った損害の賠償をする責任が生じるリスクがあります。

2 債務超過状態での事業継続
 債務超過会社の取締役が事業を継続した場合に、善管注意義務となるか判断した裁判例として、高知地方裁判所平成26年9月10日判決があります。同裁判例によると、①当該企業の業種業態、②損益や資金繰りの状況、③赤字解消や債務の弁済の見込みなどを総合的に考慮判断し、事業の継続又は整理によるメリットとデメリットを慎重に比較検討し、企業経営者としての専門的、予測的、政策的な総合判断を行うことが要求され、このような判断が善管注意義務に違反するかは、その判断の過程(情報の収集、その分析・検討)と内容に著しく不合理な点があるかどうかという観点から、審査されるべきであるとされています。
 ご質問のケースでは、社長の善管注意義務違反が認められるかどうかは、新商品等からの利益がどの程度見込めるか、それらにより赤字を解消し、仕入れ先への代金支払いが可能となるかどうか、事業を継続することにより、かえって赤字幅を拡大させ、ひいては株主や会社債権者等が不利益を被る可能性の方が高いかなどを比較考慮して判断されることになります。

3 回答
 貴社の事業を継続するとの社長の判断が著しく不合理でなければ、仮に、経営環境の急変などにより、取引先へ代金の支払いができなくなろうとも、社長個人の責任が追及されるリスクは少ないといえます。

代表取締役の会社資産の売却

(質問)
 代表取締役Yは、ギャンブルで負けた借金の穴埋めをするため、必要がないのに会社の資産を売却して、その売却金を私的に流用しようとしていることが判明しました。
 しかし、当社は、会社資産が売却されてしまうと、事業に重大な支障が出てしまうので、Yのかかる行為を防止したいと考えています。
 Yの弟で、当社の専務である私は、どのような措置が採れるのでしょうか。

(回答)

1 専務の採り得る法的手段
 まず、専務はYの職務の執行に関し、Yが会社の目的の範囲外の行為その他法令又は定款に違反する行為をするおそれがあり、当該行為により会社に回復することができない損害が発生することを理由に、Yの会社資産の売却の差止請求の仮処分を検討することになります。
 しかし、Yは相当金策に苦慮していて、将来的には、どうしても会社資産を売却してしまいそうなので、当該資産の売却を差止めただけでは目的を達成できない可能性があります。
 そこで、専務としては、取締役会で、Yを代表取締役から解任するよう取締役会に提案することになりますが、これは他の取締役が反対すると難しいと考えられます。

2 会社訴訟とは
 企業法務においては、会社訴訟は重要です。会社訴訟には株主総会決議取消しの訴え、株主代表訴訟、取締役に対する責任追及、新株発行差止請求のほか、本件のような取締役解任の訴え等のさまざまな類型が存在します。
 会社訴訟においては、本件のように会社の重要資産が売却されてしまうと、後でそのダメージが回復できないことが多いので、紛争の天王山は時間のかかる訴訟ではなく、仮処分の審尋と決定になることが多いです。

3 取締役としての使命感
専務としては、Yの違法行為を傍観して、会社をみすみす倒産させてしまったのでは従業員やステークホルダーに申し訳が立ちません。また、Yの違法行為を放置していると、自らが会社に対して損害賠償責任を負ったり、他の株主から株主代表訴訟を提起されるリスクも生じます。
 親族間においては、話し合いを最優先にすべきですが、中小企業といえども、ケースによっては毅然とした法的対応も必要となります。 

4 回答
 ご質問のケースでは、専務は、法的手段として、Yが職務の執行に関し不正行為又は法令・定款に違反する重大な事実があるとして、Yの職務執行停止の仮処分、職務代行者選任の仮処分とYの取締役解任の訴訟を申し立てをすることが考えられます。

従業員の逮捕に対する会社の対応

(質問)
 当社の従業員Yが通勤中に痴漢で逮捕されました。
 当社の初動対応はどうすれば良いでしょうか。

(回答)

1 事実関係の把握
 従業員が逮捕された場合、会社から見ると、突然の無断欠勤という形をとることがほとんどです。この段階で、従業員の家族から逮捕されたということで会社に相談があることもありますし、逮捕の事実は伏せて、家族から病欠の連絡があることもあります。
 会社が逮捕の事実を把握したら、まず、家族や弁護人から事情を聞き状況を把握することが先決です。また、接見禁止命令が出されていなければ、逮捕されている警察署の留置係に電話して、可能であれば面会に行っても差し支えありません。

2 弁護人との対応
 弁護人から、身柄拘束を解くための資料として、会社関係者の上申書等の提出を依頼されることがあります。早期解決が望ましいと考えているのであれば協力しても良いところですが、重い懲戒処分を想定している場合には、ここで出した書面が懲戒処分の効力に影響を与える可能性にも配慮して検討する必要があります。

3 欠勤の処理
 従業員の逮捕による欠勤は、労働者の責に帰すべき事由による労働義務の履行不能と評価されます。この場合、使用者に賃金支払義務は発生しません。
 また、実務上、逮捕に伴う欠勤について、事後的に有給休暇を振り返る取扱いをすることがありますが、会社として重い懲戒処分を想定しているような場合には、懲戒処分の根拠として欠勤の事実を援用することになりますから、このような取扱いはしない方が良いと考えます。

4 懲戒処分
 刑事手続においては、有罪判決が確定するまでは犯人として取り扱わないことが原則となっていますから(無罪推定の原則、刑事訴訟法第336条参照)、犯罪行為を行ったことを理由に懲戒処分を行う以上、有罪判決が確定するまでは処分を控えるべきです。

5 会社の予防策
 会社は、従業員に対して、勤務時間外といえども犯罪行為を犯した場合に被るペナルティ等に関する研修を実施することが考えられます。
 また、会社としては、従業員の勤務時間外の犯罪行為に対し、曖昧な対応ではなく、再度の過ちを防ぐため、認定した事実関係と処分に係る量定を記録に残すことも必要となります。

6 回答
 貴社は、Yの弁護人を通じるか、担当者が自ら面会に行くかして、Yから逮捕事実に係る事実関係を確認することになります。
 その上で、Yの欠勤の処理を行い、有罪判決が確定すれば懲戒処分を行うことになります。

効率の悪い長時間残業の是正方法

(質問)
当社は、3交代で製造ラインをフル稼働させていますが、製品の納期に追われることが多く、従業員は恒常的に残業していました。ただし、残業をするのが当然という感じで、生産管理や製造工程の効率化の工夫はあまりなされておらず、効率的に業務を行っている様子はありませんでした。
そのような中、労働基準監督署の立入り調査が入り、未払残業代支払と業務改善の勧告を受けました。
当社は、今後どのような方法を採れば良いでしょうか。

(回答)

1 時間外労働増加の要因
 中小企業は、いわゆる納期に追われることが多々あります。また、中小企業の中には、例えば、製品の生産システムが効率的でなかったり、上司が帰るまでは帰りにくいといった雰囲気があるなどさまざまな原因で、恒常的に長時間の時間外労働が存在することがあると考えられます。

2 割増賃金と附加金のリスク
 時間外労働等の割増賃金は、次のとおりです。
 ア 時間外労働は125%以上
 イ 深夜労働は125%以上
 ウ 休日労働は135%以上
 上記の重複の場合、例えば、時間外労働+深夜労働は150%、休日労働+深夜労働は160%になります。
 また、1か月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増が必要で、1か月60時間を超える時間外労働+深夜労働は175%以上の割増になります。
 以上のとおり、時間外労働は多額の賃金支払義務につながり、中小企業にとっては経営圧迫要因となります。
 加えて、企業が労働者から訴訟において残業代を請求されると、裁判所から附加金を命じる判決により企業が支払わなければならない額が2倍になるリスクもあります。

3 長時間残業のリスク
 長時間の残業には、メンタルヘルスのリスクが生じること、疲労による労災発生のリスクが高まること、未払残業代請求のリスクが高まること、労働組合の加入のリスクが高まることなどさまざまなリスクがあります。

4 不要な残業をなくすための対策 
 このため、会社としては不要な残業をさせないための体制の整備とルール作りを行うとともに、そもそも恒常的なダラダラ残業を発生させないような労務管理を構築する必要があります。
 また、部署によって残業の多い少ないの差異が生じているのであればそれを是正するための組織改革、業務処理方法の改善も併せて検討すべきです。

5 回答
 貴社は、今後、ラインの各責任者が生産管理をきちんと行って、ラインごとの生産性を数値で把握するとともに、夕礼の実施と残業による業務内容を明確にさせること、材料の機械への搬入距離の短縮等製造工程の全面的な見直し、残業を許可制にかからせること等を通じ、不要な残業を極力減らす努力を行うべきです。

景品類の提供の注意点

(質問)
 当社では新商品を売り出すに当たり、抽選で景品を配ろうと考えておりますが、景品限度額等、注意点を教えてください。

(回答)

1 景品類とは
 最近では、個人消費が冷え込み、企業間競争も活発になっており、企業においても、顧客開拓や販売促進のために景品を付ける例が増えています。
 景品類の提供については、景品表示法及び公正取引委員会の告示により、景品類の限度額等の規制がなされています。 
 景品表示法では、「景品類」を、①顧客を誘引するための手段として、②事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、③物品、金銭その他の経済上の利益と定義しています(法第2条第3項)。

2 対象類型
 対象類型は次のとおりです。
 ①一般懸賞とは、商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供すること(共同懸賞以外のもの)
 ②共同懸賞とは、複数の事業者が共同して実施する懸賞
 ③総付景品とは、懸賞によらないでつけられる景品類で、ベタ付け景品とも呼ばれます。

3 景品類の限度
 ア 一般懸賞
  ①取引価額が5,000円未満の場合は、景品限度額は取引価額の20倍、②5,000円以上の場合は、10万円、③景品類の総額は懸賞に係る売上予定総額の2%が限度です。
  例えば、1個1万円の商品購入者に対し、抽選で景品を配る場合には、懸賞による場合ですので、景品は合計で上限の10万円以下でなければなりません。

 イ 共同懸賞
   景品類限度額は、取引価額にかかわらず30万円、景品類の総額については懸賞に係る売上予定総額の3%です。

 ウ 総付景品
  ①取引価額1,000円未満の場合、景品類の最高額は200円、②取引価額が1,000円以上の場合は景品類の最高額は取引価額の10分の2が限度です。

4 値引きについて
 例えば、「10個以上買う方には100円引き」、「商品シール10枚ためて送付すれば100円キャッシュバック」などの正常な商慣習に照らして値引と認められるものについては、原則景品類に当たらないとされており、景品表示法の規制に服しません。ただし、減額・キャッシュバックした金銭の使途を制限する場合などは、例外として、値引きではなく、景品類に該当しません。

反社会勢力的との賃貸借契約解除

(質問)
 当社はマンションの賃貸業を行っていますが、賃借人に暴力団員Yがいることが判明しました。
 当社はYとの契約を解除したいと考えているのですが、解除できるのでしょうか。

(回答)

1 暴力団排除条例
 都道府県等地方公共団体においては、暴力団排除条例が制定されています。
 以下では、平成23年4月1日に施行された岡山県暴力団排除条例に基づき、事業活動における禁止行為について説明します。
 ①利益供与及び助長取引の禁止
  事業者は、その行う事業に関し、暴力団の活動を助長し、又は運営に資する目的で、暴力団員等又は暴力団員等が指定する者に対し、金品その他の財産上の利益を供与してはならないとされています(同条例第15条第1項)。
  例えば、みかじめ料の支払、襲名披露会場の貸出しなどです。
 ②暴力団の威力の利用等の禁止
  事業者は、暴力団の威力を利用し、又は暴力団の活動を助長する目的で、暴力団員等をその行う事業に利用し、又は従事させてはならず、その行う事業に関し、暴力団の威力を利用してはならないとされています(同条例第16条)。
  例えば、「うちのバックには○○組がついてるぞ」と言うなどです。
 ③違反時の勧告、公表
  公安委員会は、上記に違反した者に対し、説明又は資料の提出を求めたり、暴力団の排除について必要な勧告をすることができるとされています(同条例第20条、第21条)。
  さらに、公安委員会は、正当な理由なく説明又は資料の提出をしなかったり、勧告をしたときは、その旨及び勧告の内容を公表することができるとされています(同条例第22条第1項)。

2 契約時における措置
 事業者は、暴力団員と契約を締結しないようにすることが重要です。その行う事業に関して契約を締結するときであって、当該契約を締結することにより暴力団の活動を助長し、又は運営に資することとなるおそれがあるときは、契約を締結しないように努めるとされています。
 次に、契約を締結するときは、暴力団の活動を助長し、又は運営に判明したときは当該契約を解除する旨を定めるよう努めるとされています。
 さらに、事業者は、書面で契約を締結するときは、当該契約の相手方が暴力団員でないことを誓約する書面を提出させる等必要な措置を講ずるよう努めるとされています(同条例第17条第1項ないし第3項)。
 以上の契約時における措置は、いわゆる努力義務です。
 しかし、企業は、暴力団と何からの形で関わることにより、社会的に信用をなくしてしまうリスクが高いこと等を踏まえ、これを訓示的な努力義務として捉えるのではなく、具体的に行うべき努力義務として捉えるべきです。

3 契約解除できるか
 貴社は、Yとの間の賃貸借契約において、Yが暴力団員の場合、貴社が契約を解除できる旨の規定があれば、貴社は警察の要請で契約を解除することは当然できます。
 問題は、賃貸借契約書にこのような特約がなかった場合です。この場合も、詐欺による取消等他の解除事由の主張が可能であれば、これを用いることも考えられます。