当社は住宅会社ですが、隣家との距離が近く、日照時間の説明について説明が十分でなかったとして、顧客から契約の解除と損害賠償を要求されています。
担当者は口頭できちんと説明したと言っていますが、当社としてはどのように対応すればいいでしょうか。
(回答)
1 説明義務違反の裁判例
宅建業者であるA社及びB社が、土地の売買契約において、当該土地のみでは接道義務を満たしておらず将来的に建て替えが不可能であったことを買主に何ら説明していなかったことをもって説明義務違反を認定して、約1,700万円の損害賠償を認めたものがあります(千葉地方裁判所平成23年2月17日判決)。
また、宅地建物取引業者が専有部分内に設置された防火扉の操作方法等について買主に対して説明を行っていなかったという説明義務違反により、当該業者に約900万円の損害賠償を認めたものもあります(東京高裁平成18年8月30日判決)。
このように、企業は、説明義務違反をもって多額の損害賠償が認められるリスクがあることに注意する必要があります。
2 対応策
契約締結段階において、どのような事実について説明すべきかを検討し、必要十分な説明を行った後、説明を行った旨の書面に相手方に署名・押印してもらうことが必要です。
企業の従業員は、顧客に対する説明はもとより、クレーム対応等も含め、さまざまな面で交渉を行うものと考えられます。
そこで、後々、言った、言わないのトラブルになりそうなケースについては、書面を交付するとか、メールでやり取りをするとか、ケースによっては、録音しておくといった交渉の記録化が必要になります。
ちなみに、録音は相手に無断で行っても差し支えありませんし、民事裁判でそのような録音の反訳文を証拠として提出することもあります。
貴社は、担当者が顧客に日照時間について説明したかどうかという点について争われること自体が大きなリスクとなってしまいます。
仮に、顧客の言い分が認められて、訴訟において解除等が認められてしまうと大きな財産的損害と信用の低下につながるからです。
貴社とすると、顧客に対して、重要な点を説明するときは、文書にして手交するなどのリスクヘッジを行うべきです。