従業員の過労死に関するニュースを目にすることがありますが、従業員の過労死を防止するためにはどのようにすればいいでしょうか。
(回答)
1どのような責任等が生じるの?
従業員の過労死に関する痛ましいニュースが後を絶ちません。
このようなことが起きてしまった場合、会社には、次のような責任が生じることが考えられます。
まず、会社は、従業員に対して、従業員の生命・健康を職場における危険から保護するように配慮する義務である安全配慮義務を負っています。そのため、会社が従業員を不法に長時間労働させた結果、従業員に健康上の障害が生じて死亡してしまった場合には、安全配慮義務違反を原因とする損害賠償義務を負う可能性が考えられます。また、従業員を不法に長時間労働させていたとして、不法行為に基づく損害賠償義務を負う可能性も考えられます。会社がこれらの損害賠償義務を負う場合、事案にもよりますが、1億円を超える支払義務を負うことになる可能性が考えられます。
会社が、労働基準法第36条に基づく時間外労働に関する労使協定に違反する残業をさせていた場合には、同条違反として、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金となる可能性も考えられます(労働基準法第119条)(なお、場合によっては、労働基準法第36条以外の規定にも違反するとして、某広告会社のように、前述の刑罰よりも重い刑罰が科せられることも考えられます。)。
このようなことになったことがマスコミ等で報道された場合には、会社の信用、評判などが著しく低下することになることが考えられます。
2 従業員の過労死を防止するにはどうすればいい?
従業員の過労死を防止するためには、まず何よりも、長時間労働の対策を実施することが重要になります。そのための方法としては、次のようなものが考えられます。
まず、時間外労働を許可制にすることが考えられます。許可制にする場合には、単に制度を設けておくだけではなく、実際に機能させることが重要になります。
また、従業員が有給休暇を適切に取得することのできる職場環境の整備を行うことが考えられます。仕事の内容などによっては、有給休暇の取得が難しい場合も考えられますが、その場合でも、例えば、年度当初に有給休暇の取得を調整して取得日を決めていく方法などによって有給休暇の適切な取得を実現すべきです。
もっとも、このようなことを実施しても長時間労働が発生する可能性も考えられます。そのような場合には、従業員に対して、産業医による面接指導を受けることを勧めることが考えられます。なお、労働安全衛生法では、月100時間を超える時間外労働を行っており、かつ、疲労の蓄積が認められる従業員から申し出があった場合には、当該従業員に対して面接指導を実施すべき旨が定められていますが、このような要件に該当しない場合であっても、長時間労働が発生している場合には実施すべきであると考えられます。
3 従業員の健康管理をしっかりと行うことが重要!
従業員に成果を出してもらうには、その前提として従業員に心身共に健康でいてもらう必要があります。また,働き方改革においても、時間外労働の上限が議論されているなど、今後ますます時間外労働について考えていく必要があるところです。
従業員の健康管理体制をどのように構築していくかなどについてお悩みの方は,弁護士などの専門家にご相談することをお勧めします。