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住宅の壁にひびが入った場合ー品確法の対象になるかー

(質問)
 「住宅」の壁にひびが入り一部が剝がれてきた場合、買主としてどのような手段で訴えることができるでしょうか。

(回答)

1 注文住宅と建売住宅 
 私達が購入する一戸建てには「注文住宅」と「建売住宅」があります。「注文住宅」は建物を建築士に設計してもらい、施工会社と建築工事請負契約を結んで建ててもらうことをいい、「建売住宅」は住宅の売主と売買契約を結んで土地付き建物を買うことをいいます。
 「建売住宅」は、前回まで説明した「瑕疵担保責任(民法570条、566条、商法526条)」が適用されます。
 これに対し、「注文住宅」は請負契約にあたるので、民法634条以下が適用されます。

2 請負契約の瑕疵担保責任について 
 請負契約の瑕疵担保責任の特徴は、以下の3点です。
 ①請負契約の注文者は請負人に対し、瑕疵の「補修」を請求することができます(民法634条)。
 ②売買契約では、瑕疵の事実を知った時から1年以内に請求しなければならないですが、請負契約では原則として目的物の「引渡し」から1年です(民法637条)。例外として、建物や土地の工作物は5年です(民法638条参照)。
 ③売買契約の瑕疵は「隠れた瑕疵」が対象ですが、仕事を完成させる義務を負う請負契約では「隠れた瑕疵に」限定されません。

3 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の瑕疵担保責任について 
 同じ住宅を購入したにも関わらず、建物か注文かで瑕疵の責任内容が異なるのは、購入者にとっては納得がいかないものです。
 そこで、住宅購入者等の利益の保護等を目的に制定された法律が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下「品確法」といいます)です。これは、瑕疵担保責任について、「新築住宅」を対象とし、瑕疵の対象となる部分を、「構造耐力上重要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」として政令で定めるものに限定しています。
 しかし、請求できる期間を目的物の引き渡しから10年とし、当事者の合意による特約で排除することはできないとする強行規定であり、保護が図られています(品確法94条1項2項、95条1項2項)。

4 品確法の対象 
 品確法が保障する「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」以外の「瑕疵」については、民法が適用されます。
 例えば、住宅の内装にひびが入った場合は、内装は一般的に「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」に該当せず、品確法の瑕疵担保責任の対象外となります。
 もっとも、住宅の内装のひびが「構造耐力上主要な部分」を起因とする場合には品確法の対象となりうる場合もありますので、判断に困るような場合は、弁護士にご相談ください。

ペットに関する飼い主の責任とは

(質問)
 私は犬を飼っています。散歩の途中に犬が一声吠えてしまい,通りすがりの方が驚きのあまり転倒して怪我をしてしまいました。
 この場合,飼い主である私に責任があるのでしょうか?

(回答)

1 ペットに関する飼い主の責任とは 
 飼い主はペットについて重い危険責任を負っていて,法律上も,相当の注意を払ったことを立証しなければ,責任を免れません。
 民法第718条第1項では次のとおり規定されています。
 「動物の占有者は、その動物が他人に与えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りではない。」
 この相当の注意というのは,動物の種類や性質に従って,通常払うべき程度の注意義務のことです。
 なので,①犬の種類,雄雌,年齢,②犬の性質,性癖,病気,③犬の加害前歴,④飼い主の管理の熟練度,⑤加害時の措置態度,⑥被害者の警戒心の有無,被害誘発の有無などを考慮に入れて,相当の注意を払っていたことを証明しない限り,責任を免れません。

2 今回の相談のケースでは 
 今回の相談のケースでは,犬に首輪をさせ,綱もしっかり握っていました。
 そして,犬は被害者を噛んだわけでもなく,単に一声吠えただけであっても,相当の注意を払ったことにはならないのでしょうか。
 裁判例ですが,同様のケースについて,「犬の飼い主には,犬がみだりに吠えないように調教すべき注意義務」があり,「特に,犬を散歩に連れ出す場合は,飼い主は,公道を歩行し,あるいは佇立している人に対し,犬がみだりに吠えることがないように,飼い犬を調教すべき義務を負っている。」として,飼い主の責任を認めています。
 被害者側に何らかの落ち度があった場合,例えば,犬が吠えるのを誘発するような行為をとったであるとか,履きにくいサンダルを履いていたとか,自転車に乗っていての転倒であれば,前籠にたくさん荷物を入れていてハンドル操作が難しい状況であった場合には,過失相殺され,賠償額が減額されるのが通常です。

裁判員裁判とは

(質問)
 裁判員裁判について教えてください。

(回答)

1 裁判員裁判とは 
 裁判員制度は、それまで検察官や弁護士、裁判官という法律の専門家が中心となって行ってきた裁判について、判の進め方や内容に、国民の視点、感覚を取り入れることによって、裁判全体に対する国民の理解が深め、国民にとって司法をより身近なものとして信頼を高めることを目的とし、2009年5月から実施されました。
 裁判員の選出方法は、衆議院議員の選挙権を有する方の中からくじで選任されます。70歳以上の方は裁判員となることについて辞退の申立てをすることができますが、辞退の申立てをされない限り、年齢の上限はありません。
 また、裁判員裁判の対象となる事件は一定の重大な犯罪です。
 例えば、殺人罪、傷害致死、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪、危険運転致死罪、覚せい剤取締法違反、保護責任者遺棄致死などといったものです。
 地方裁判所で行われる刑事事件のみが対象になり、刑事裁判の控訴審・上告審や民事事件、少年審判等は裁判員裁判の対象にはなりません。
 対象となる事件の件数は、地方裁判所が扱う刑事裁判のうち、2.5%~3.5%で件数では年間2,500件~4000件ほどです。
 平成25年の統計を前提によると、実際に裁判員又は補充裁判員として刑事裁判に参加する確率は、約9,500人に1人程度(0.01%)です。

2 求刑よりも重い判決 
 以前,傷害致死事件の裁判員裁判で,検察官の求刑より1.5倍の懲役刑を言い渡した事件について,最高裁は第1審と第2審の判決を破棄した事件があります。
 検察官の求刑は懲役10年だったのに対し,裁判員裁判では懲役15年の判決となり,第2審でもその判断が維持されたものが,最高裁で覆されたという事件です。  
 最高裁はまず,裁判員制度について,刑事裁判に国民の視点を入れるために導入されたもので,したがって,量刑に関しても,裁判員裁判導入前の先例の集積結果に相応の変容を与えることがあり得ることは当然に想定されていたと述べています。
 もっとも,その後で,裁判員裁判といえども,他の裁判の結果との公平性が保持された適正なものでなければならず,評議に当たっては,これまでのおおまかな量刑の傾向を裁判体の共通認識とした上で,これを出発点として当該事案にふさわしい評議を深めていくことが求められているとも述べています。 
 要するに,裁判員裁判で量刑に影響があることは当然だけれども,これまでの量刑の傾向を踏まえて,個々の事案に応じた評議をすることを求めているということです。
 最高裁は,このような枠組みを示したうえで,これまでの傾向を変容させる意図を持って量刑を行うことも,裁判員裁判の役割として直ちに否定されるものではないが,そうした量刑判断が公平性の観点からも是認できるものであるためには,従来の量刑の傾向を前提とすべきではない事情の存在について,裁判体の判断が具体的,説得的に判示されるべきと述べています。
 つまり,最高裁は,従来の量刑以上の判断を否定しているのではなく,きちんと具体的,説得的に説明されればよいと判断しています。
 ところが,この裁判の第1審判決では,公益の代表者である検察官がこれまでの量刑の傾向から懲役10年という求刑をし,それを大幅に超える懲役15年という量刑判断をしたことについて,具体的,説得的な根拠が示されているとはいい難いとして,最高裁が破棄自判をしたというものです。

3 量刑相場は裁判官を拘束するか 
 この最高裁判決に対しては,私は懐疑的です。
 そもそも憲法76条3項では,裁判官は良心に従い独立して職権を行い,憲法と法律にのみ拘束されると規定されています。
 そして量刑相場は「懲役何年以下」というように,ある程度幅のある規定がなされている刑罰法規の中で,具体的な刑を決める参考となるものに過ぎません。
 すなわち,憲法上,量刑相場は裁判官を拘束するものとはなっていないのです。
 この最高裁判決は,従来の量刑の傾向を前提とすべきではない事情を具体的,説得的に説明しなさいと言っているのですが,従来の量刑の傾向を重視しすぎているように思います。
 裁判員制度は国民の声を反映させるために導入したものであり,過去の量刑相場に固執していては裁判員制度が無意味なものとなってしまいます。
 また,裁判官も先ほど述べたように過去の量刑相場に拘束される必要はないので,裁判員の意見を広く取り入れればよいと思います。
 そして,刑事裁判において,この世で全く同じ事実関係であるということはありえないので,個別の事情のもとに,柔軟な裁判員の意見を踏まえて,量刑を決めるべきでしょう。
 裁判員裁判もまだ過渡期にあると思います。これまでの量刑の傾向はあくまでも「過去」のもので,世論が厳罰化に動いているのであれば,裁判所はその声をしっかり聴く必要があります。
 この度の最高裁による判断も,「将来」において十分に検討し,変更の必要があれば見直すべきときが来るかもしれません。

隣人トラブルに要注意ー隣地の使用権とはー

(質問)
 先日,風の強い日に瓦が飛ばされて,私の隣の家の外壁が一部壊れてしまいました。
 そこで,外壁の修理工事をしようと思ったのですが,足場を隣の家の敷地に組まないと工事ができないと大工さんに言われ,隣の家の方に敷地の使用をお願いしたら断られてしまいました。
 このような場合どうしたらいいのでしょうか?

(回答)

1 隣地の使用権 
 最近,住人間の人間関係が希薄になってきているせいか,近隣所とのトラブルに関する相談が増えています。
 まず,隣の家の敷地を使用することに関して,民法第209条で次のとおり規定があります。
 「第209条
 1 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使 用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
 2 前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。」
 つまり,今回の質問のように隣人が承諾していないと勝手に隣人の敷地に入って工事することはできないのです。

2 承諾に代わる裁判 
 ではどうしたらいいのかと申しますと,訴訟によって承諾に変わる裁判を求めることになります。
 通常,裁判で相手方に求めるものと言えば,お金であったり物であったりするのですが,承諾を求めることもできます。
 そして,今回の場合,訴える相手は,弦に隣の家の敷地を使っている土地の所有者や借地人になります。
 また,緊急に工事をしなければならない場合には,仮処分命令を得て使用することになります。

3 隣人にお金を支払う義務はあるか 
 前述の民法第209条の2のとおり,隣人が損害を受けたときはその償金を請求することができます。
 この償金には,隣人の被った損害を補償するという性格と,工事をスムーズに進めることができた利益を補還するという性格があります。
 例えば工事に屋根を使わせてもらった場合,屋根を使わせてもらったことで工事をすることができ,利益を得た以上,隣人から請求されればいくらかは支払わないといけないでしょう。

4 隣人トラブルは要注意 
 前述のとおり,相手が拒否した場合は,裁判を起こして,必要な範囲などの承諾(判決)をしてもらえます。
 しかし,仮に調停や判決で立ち入りが許されても,感情的なしこりがついて回り,隣人との関係がますます悪化してしまうリスクもあります。
 いくら民法上認められた権利とはいえ,出来れば自分の敷地内で工事が出来たり,いざというときのための良好な人間関係の形成が必要だと思います。
 また,法律を全く知らない工事人によっては,断りも無しに,平気で他人の家の屋根に上がって作業し始める人がいますが,これもトラブルの元ですので,注意してください。

店舗内での事故

(質問)
 当社の店舗内に気付きにくい段差があり、これまでもお客様の何名かが転倒しています。
 もしも転倒等によりお客様に大きな負傷が生じた場合、当社に損害賠償義務は生じるのでしょうか。
 また、どのような対策をしたら良いのでしょうか。

(回答)

1 工作物責任
 工作物責任とは、建物の崩壊など工作物に起因する事故につき、工作物の設置または保存に瑕疵がある場合に成立する特別の賠償責任です(民法717条)。建物の占有者は建物の設置の瑕疵によって生じた損害を賠償する義務があるとされています。見えにくい段差で過去に何人も転倒している以上、工作物が安全性を欠いた状態で、安全面に欠陥があることは明らかなので、仮に、来客が転倒等により負傷した場合は、工作物責任が認められる可能性は高いといえます。

2 事故リスクの把握
 施設内での事故防止策を検討するためには、現状を的確に把握する必要があり、そのためには施設内で起こった事故を把握するほか、事故につながりそうになった事例(ヒヤリ・ハット事例)を収集して活用することが有効です。
 収集した事例は「分析」⇒「要因の検証と改善策の立案」⇒「改善策の実践と結果の評価」⇒「必要に応じた取り組みの改善」といったいわゆるPDCAサイクルによって活用していくこととなります。

3 対策
 貴社においては、単に危険注意といった貼り紙だけで十分か、顧客の動線も意識した店舗全体としての対応が必要か、幼児や高齢者の施設内への進入の頻度等を検討することになります。
 組織全体としての対策は、次のとおりです。
 ①事故背景を明確にし、それを公表する(情報の共有)。
 ②事故要因をなくす。
 ③理にかなった事故防止対策マニュアルを作成し改正を繰り返す。
 ④事故防止の教育システムを構築する。
 そのほか、施設の安全管理については、屋外の看板落下や遊戯具の損壊、倒壊等のリスクもあるので、施設全体としての安全性にも注意を払うべきです。
 貴社とすれば、転倒防止のための段差の解消といった抜本的な対応が必要となります。

空き家のリスクとは?

(質問)
 最近空き家が増えているとよく聞きます。
 空き家のリスクはどのようなものですか?

(回答)

1 空き家対策特別措置法 
 2015年5月から空き家対策特別措置法が施行されました。
 これは市町村の調査で1年以上人が住んでいないということで特定空き家と認定されれば,指導,勧告,撤去命令を出せることになっている法です。
 2013年10月の調査では,全国に820万戸の空き家があって,空き家率は何と13.5%なのです。
 つまり,7軒か8軒に1軒は空き家ということになります。

2 空き家のリスク 
 空き家のリスクは,①防犯上の問題,②衛生面の問題,③景観を損ねる,④家が劣化するなどが挙げられます。
 防犯上の問題もありますが,倒壊等により保安上危険,ゴミが捨てられたり,ネズミとかが入ったりとかして衛生上有害,景観を損ねるといった問題もあります。
 場合によっては,空き家があることによって,近隣の地価が下がることもあり得るのかもしれません。
 それから何よりも家が劣化して価値が下がります。

3 空き家を減らすには 
 空き家を減らすには,①税制面での誘導,②リスクの啓発,③自宅をどうするかについての家族の話し合い,④中古住宅の流通の促進,⑤リフォームや取壊しに対しての補助金などが挙げられます。 
 最終的には,一人一人の意識ですが,例えば,特定空き家に認定されれば土地の固定資産税が上がったり,空き家を売買した場合に3,000万円までの控除が認められるのですが,こういった税務面での誘導のほかに,空き家にはリスクが伴う,特に火事とかになれば近隣から損害賠償が起こされるリスクがあることを啓発することが大切ですね。
 また,自分の家が将来空き家にならないように,家族で将来よく話し合っておくことも必要だと思います。
 それから,我々専門家も空き家の解消に向けて,地方自治体や町内会と協力して空き家を含めた中古住宅の流通を促進していくとか,自治体が空き家リフォームや再築を前提に取壊しに補助金を出すとか,あるいは,将来の取壊の際の積立金制度も必要なのかもしれません。

ダフ屋を取締まる法律はあるの?

(質問)
 いわゆるダフ屋を取締まる法律はないのですか?

(回答)

1 ダフ行為とは 
 ダフ行為とは,コンサートやスポーツのチケットを購入し,買えなかった人に売る行為をいいます。このような行為を行う人のことは,(商売として行っていなかったとしても)「ダフ屋」と呼ばれます。
 ダフ行為自体を,規制する法律は存在しません。しかし,多くの地方公共団体の定める条例では,ダフ行為を取り締まりの対象としていることも多くあります。

2 迷惑防止条例 
 たとえば,岡山県では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下「迷惑防止条例」といいます。)を制定しています。
 この岡山県の迷惑防止条例の第9条では,「何人も,乗車券,急行券,指定券,寝台券その他運送機関を利用しうる権利を証する物又は入場券,観覧券その他公共の娯楽施設を利用しうる権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売するため,又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため,乗車券等を公衆に発売する場所において買い,又は公衆の列に加わつて買おうとしてはならない。2 何人も,転売する目的で得た乗車券等を,公共の場所において,不特定の者に売り,又は人につきまとつて売ろうとしてはならない。」と規定しており,ダフ行為を禁止しています。
 この規定に違反すれば,第14条に基づき罰則が科せられることとなっています。  
 第14条は,「第2条,第5条,第6条,第7条第1項又は第8条から第12条までの規定に違反した者は,50万円以下の罰金に処する。 2 常習として前項に規定する違反行為をした者は,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。

3 値段は関係なし 
 岡山県の迷惑防止条例第9条をよく見ていただければ分かると思いますが,元のチケットよりも高い金額での売却は要件となっていません。
 つまり,元のチケットと同じ価格もしくは安価でも,「公共の場所で」転売すればダフ行為として処罰の対象となるのです。

4 インターネットオークション 
 さて,昨今のインターネット社会で問題となっているのは,インターネットオークションでのチケット転売であろうと思います。
 インターネット上は,「公共の場」ではないと考えられていますので,インターネット上での転売行為は,実はダフ行為には当たりません。
 他方,インターネットオークションで転売するために,チケット売り場でチケットを購入する行為は,「不特定の者に転売するため,又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため,乗車券等を公衆に発売する場所において買い,又は公衆の列に加わつて買おうと」する行為に該当しますので,ダフ行為に該当します。
 インターネットオークションに関して取締対象になっている行為は,転売自体ではなくチケット仕入れ行為なのです。

自転車のリスクーチャリスマホの代償とはー

(質問)
 チャリスマホの代償はどのようなものですか?

(回答)

1 改正道交法の内容 
 自転車運転中に「危険なルール違反」を繰り返すと「自転車運転者講習」(3時間:5,700円)を受けることになります。
 具体的には「危険行為を反復(3年以内に2回以上)」→「受講命令」→「講習の受講」となりますが,公安委員会による受講命令に反すると5万円以下の罰金が科せられることになります。
 「危険なルール違反」,すなわち「危険行為」としては下記の14類型が挙げられます。
 (1)信号無視(道交法第7条)        
 (2)通行禁止違反(同第8条第1項)
 (3)歩行者用道路における車両の義務違反(徐行違反)(同第9条)
 (4)通行区分違反(同第17条第1項,第4項又は第6項)
 (5)路側帯通行時の歩行者の通行妨害(第17条の2第2項)
 (6)遮断踏切立ち入り(同第33条第2項)
 (7)交差点安全進行義務違反等(第36条)
 (8)交差点優先車妨害等(第37条) 
 (9)環状交差点安全進行義務違反等(第37条の2)
 (10)指定場所一時不定止当(第43条)
 (11)歩道通行時の通行方法違反(第63条の4第2項)
 (12)制動装置(ブレーキ)不良自転車運転(第63条の9第1項)
 (13)酒酔い運転(第65条第1項)(14)安全運転義務違反(第70条)

2 「チャリスマホ」の大問題 
 上記のように,14項目の危険行為が自転車運転者講習の対象となることがご理解いただけたと思いますが,チャリスマホの問題は,上記(14)に該当する可能性が極めて高い点にあると思います。
 上記(14)は,「安全運転義務違反」とのみ規定されており,具体例はわかりません。 
 しかし,「スマホ」の「ながら運転」をしているあなた!「チャリスマホ」は「安全運転義務違反」になる可能性の高い行為なのです。
 最近は,昼夜を問わず,スマホに接しています。そのような「スマホ依存」は自転車に乗っている時にも現れています。スマホでの電話,スマホでLINE,このような「チャリスマホ」に轢かれそうになった歩行者,少なくはないと思います。また,自動車を運転している時も,異様にふらついている自転車は大抵が「チャリスマホ」です。

3 事故を起こした場合の代償 
 事故を起こせば,数千万円単位の損害賠償責任も発生する可能性もあります。
 また,事故を起こさなくとも,5,700円の受講料を支払って3時間の講習を受けなければならなくなる可能性もあります。
 自転車でスマホを操作したいと思ったときは,どうか,少し呼吸をおいて,自転車を止めてから操作をして下さい。
 あなたのその勇気は,ご自分を含め沢山の人を救うことを念頭においてください。 
 自転車マナーがこの改正道交法施行によって改善することを望みます。

4 チャリスマホ以外の自転車のリスク 
 また,最後にはなりましたが,「チャリスマホ」の問題の他に,(ア)信号無視〔上記(1)〕,(イ)酒酔い運転〔上記(13)〕の問題も気になります。
 私は,学生さん達とお酒を飲む機会もあります。お酒を飲んだ後は,絶対に「酔いチャリ」しない!「必ず,引いて帰る!」これを徹底してもらってます。
 まぁ,そもそも,飲み屋にチャリで来るのを防止するのが先ですね。

ソーシャルメディアとは

(質問)
 ソーシャルメディアとはなんですか?

(回答)

1 ソーシャルメディアとは 
 ソーシャルメディアとは,ブログ・ソーシャルネットワーキングサービス・動画共有サイトなど利用者が情報を発信し,形成していくメディアをいいます。
 利用者同士のつながりを促進する様々な仕掛けが用意されており互いの関係を視覚的に把握できるのが特徴であるとされています。

2 ソーシャルメディアの特性 
 ソーシャルメディアの特性としては,以下の点を挙げることができます。
 (1)手軽かつ即時に発信できるという強みがある反面,熟考することなく発信してしまう利用者が多いこと
 (2)発言の一部分が切り取られる等により,本人の意図しない形で伝播する可能性があること
 (3)氏名・所属組織を明らかにせずに行う発信であっても,過去の発信等から発信者又はその所属組織の特定がなされる可能性があること,特定がなされた場合には組織自体の評判に関わる可能性があること
 (4)断片的な情報であったとしても,過去の情報や他の情報から内容の特定がなされる可能性があること

3 ソーシャルメディアの私的利用にあたっての留意点 
 ソーシャルメディアの私的利用にあたっての留意点として,総務省は,国家公務員に対して,
 (1)国家公務員法に規定する守秘義務に違反する発信を行わないこと
 (2)職務専念義務が課せられていることに鑑み勤務時間中の発信は行わないこと
 (3)所属組織の見解ではなく,個人の見解によるものであることを明確に記述すること
 (4)業務上支給されている端末を用いて発信を行わないこと
 等を通知しました。
 これは,復興庁職員がツイッターで不適切発言を行った事案を踏まえて平成25年6月28日に総務省が「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」として取りまとめたものです。
 ソーシャルメディアの不適切な利用により損害賠償義務まで認められた裁判例は未だ存在しないようですが,ソーシャルメディアは思想信条や宗教などの衝突の可能性があることや他人の個人情報・肖像・プライバシーが明らかになる可能性があることから,損害賠償の対象となる危険性を有するものです。
 したがって,ソーシャルメディアの私的利用に関してルールを制定するとともに責任の所在を明らかにするルールを作成しておくことが必要であると考えます。

4 ソーシャルメディアの私的利用に関するルール 
 上述したように総務省は国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点については周知徹底を行い,内規制定,研修の実施等を行うことを求めています。
 また,総務省の上記周知に伴い,岡山県でも地方公務員に対して上記同様の周知徹底を行い注意を喚起しています。さらに,民間企業でもソーシャルメディアの私的利用についての研修を行う動きがみられています。

5 社内ルールとしてのソーシャルメディアの利用方法 
 ソーシャルメディアは,今後の発展が大きく予想されますので,それに伴い損害賠償の問題にもなる可能性があります。
 法人の職員として守秘義務を遵守することや勤務時間中(出張移動中も含む)に発信しないことは最低限守るべきルールであると考えられます。 
 企業においてもソーシャルメディアの私的利用についてルール作りをすることは組織のマネジメントとして必要不可欠なものです。
 早急にルール作りをすることを強くお勧めします。

会社の定期健康診断以外に,精神疾患の疑いのある従業員に対して,診察を受けるよう命じるのは法的問題があるか?

(質問)
 当社は,毎年3月に定期健康診断を実施していますが,この定期健康診断以外に,精神疾患の疑いのある従業員に対して,診察を受けるように命じようと考えています。
 このことに関して問題はあるでしょうか?

(回答)

1 メンタル問題が急増している! 
 近年,従業員のメンタルヘルスに関する問題が急増しています。従業員が過度の仕事によってメンタルバランスを崩して精神疾患を発症した場合,その精神疾患が労災と認定されるおそれがあります。労災と認定されますと,企業は,従業員の健康等への配慮義務を欠いていたとして,数百万円単位の損害賠償をしなければならない可能性があります。
 また,近年,労働安全衛生法の精神疾患に関する改正が検討されていることからも,企業は,今後ますます従業員のメンタルに配慮する必要が出てくると考えられます。

2 受診を命令することはできる? 
 労働安全衛生法によりますと,企業は,常時雇用している従業員に対して,雇入れ時及び1年に1回の定期健康診断を実施する義務があります(労働安全衛生法第66条第1項,労働安全衛生規則第44条第1項)。そして,従業員も,この定期健康診断を受診する義務があります(労働安全衛生法第66条第5項)。
 もっとも,御相談の件は,この定期健康診断以外で診察を受けるように命じたいとのことなので,別に考える必要があります。

3 就業規則に規定を設けること! 
 この点に関して,最高裁は,就業規則において受診義務に関する規定があり,その規定に合理性・相当性が認められる場合には受診を命令することができると判示しています(最高裁昭和61年3月13日 労判470号6頁)。
 奇特な言動が目立ってきた等,メンタルの不調が疑われるような従業員に対して,企業が受診を命じることができるという規定は,一般的に合理性,相当性が認められると考えられます。
 そこで,御社についても,就業規則に,そのような旨の規定を設けていれば,受診させることができると考えられます。
 もっとも,受診の結果を企業が知るためには,従業員から診断書等の任意提出を受けるか,あるいは,従業員の同意のもとで受診した医師から受診結果について聴取することになります。

4 従業員のメンタルに配慮すること 
 従業員がメンタルバランスを崩して精神を患うと,企業に損害賠償責任が生ずるおそれだけではなく,職場の雰囲気が悪くなり,士気が低下するおそれもあります。   
 また,このようなことで裁判になってしまうと,マスコミによって報道される結果,企業のレピュテーションが低下してしまう可能性もあります。
 このように,従業員のメンタルバランスは,従業員個人にとって重要なのはもちろんですが,企業にとっても重大なものであるといえます。

5 メンタルに配慮した制度設計を 
 従業員のメンタルに配慮した制度設計のみならず,就業規則そのものについて何かお悩みがあるようでしたら,弁護士にご相談されることをお勧めします。