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代表取締役の会社資産の売却

(質問)
 代表取締役Yは、ギャンブルで負けた借金の穴埋めをするため、必要がないのに会社の資産を売却して、その売却金を私的に流用しようとしていることが判明しました。
 しかし、当社は、会社資産が売却されてしまうと、事業に重大な支障が出てしまうので、Yのかかる行為を防止したいと考えています。
 Yの弟で、当社の専務である私は、どのような措置が採れるのでしょうか。

(回答)

1 専務の採り得る法的手段
 まず、専務はYの職務の執行に関し、Yが会社の目的の範囲外の行為その他法令又は定款に違反する行為をするおそれがあり、当該行為により会社に回復することができない損害が発生することを理由に、Yの会社資産の売却の差止請求の仮処分を検討することになります。
 しかし、Yは相当金策に苦慮していて、将来的には、どうしても会社資産を売却してしまいそうなので、当該資産の売却を差止めただけでは目的を達成できない可能性があります。
 そこで、専務としては、取締役会で、Yを代表取締役から解任するよう取締役会に提案することになりますが、これは他の取締役が反対すると難しいと考えられます。

2 会社訴訟とは
 企業法務においては、会社訴訟は重要です。会社訴訟には株主総会決議取消しの訴え、株主代表訴訟、取締役に対する責任追及、新株発行差止請求のほか、本件のような取締役解任の訴え等のさまざまな類型が存在します。
 会社訴訟においては、本件のように会社の重要資産が売却されてしまうと、後でそのダメージが回復できないことが多いので、紛争の天王山は時間のかかる訴訟ではなく、仮処分の審尋と決定になることが多いです。

3 取締役としての使命感
専務としては、Yの違法行為を傍観して、会社をみすみす倒産させてしまったのでは従業員やステークホルダーに申し訳が立ちません。また、Yの違法行為を放置していると、自らが会社に対して損害賠償責任を負ったり、他の株主から株主代表訴訟を提起されるリスクも生じます。
 親族間においては、話し合いを最優先にすべきですが、中小企業といえども、ケースによっては毅然とした法的対応も必要となります。 

4 回答
 ご質問のケースでは、専務は、法的手段として、Yが職務の執行に関し不正行為又は法令・定款に違反する重大な事実があるとして、Yの職務執行停止の仮処分、職務代行者選任の仮処分とYの取締役解任の訴訟を申し立てをすることが考えられます。

従業員の逮捕に対する会社の対応

(質問)
 当社の従業員Yが通勤中に痴漢で逮捕されました。
 当社の初動対応はどうすれば良いでしょうか。

(回答)

1 事実関係の把握
 従業員が逮捕された場合、会社から見ると、突然の無断欠勤という形をとることがほとんどです。この段階で、従業員の家族から逮捕されたということで会社に相談があることもありますし、逮捕の事実は伏せて、家族から病欠の連絡があることもあります。
 会社が逮捕の事実を把握したら、まず、家族や弁護人から事情を聞き状況を把握することが先決です。また、接見禁止命令が出されていなければ、逮捕されている警察署の留置係に電話して、可能であれば面会に行っても差し支えありません。

2 弁護人との対応
 弁護人から、身柄拘束を解くための資料として、会社関係者の上申書等の提出を依頼されることがあります。早期解決が望ましいと考えているのであれば協力しても良いところですが、重い懲戒処分を想定している場合には、ここで出した書面が懲戒処分の効力に影響を与える可能性にも配慮して検討する必要があります。

3 欠勤の処理
 従業員の逮捕による欠勤は、労働者の責に帰すべき事由による労働義務の履行不能と評価されます。この場合、使用者に賃金支払義務は発生しません。
 また、実務上、逮捕に伴う欠勤について、事後的に有給休暇を振り返る取扱いをすることがありますが、会社として重い懲戒処分を想定しているような場合には、懲戒処分の根拠として欠勤の事実を援用することになりますから、このような取扱いはしない方が良いと考えます。

4 懲戒処分
 刑事手続においては、有罪判決が確定するまでは犯人として取り扱わないことが原則となっていますから(無罪推定の原則、刑事訴訟法第336条参照)、犯罪行為を行ったことを理由に懲戒処分を行う以上、有罪判決が確定するまでは処分を控えるべきです。

5 会社の予防策
 会社は、従業員に対して、勤務時間外といえども犯罪行為を犯した場合に被るペナルティ等に関する研修を実施することが考えられます。
 また、会社としては、従業員の勤務時間外の犯罪行為に対し、曖昧な対応ではなく、再度の過ちを防ぐため、認定した事実関係と処分に係る量定を記録に残すことも必要となります。

6 回答
 貴社は、Yの弁護人を通じるか、担当者が自ら面会に行くかして、Yから逮捕事実に係る事実関係を確認することになります。
 その上で、Yの欠勤の処理を行い、有罪判決が確定すれば懲戒処分を行うことになります。

効率の悪い長時間残業の是正方法

(質問)
当社は、3交代で製造ラインをフル稼働させていますが、製品の納期に追われることが多く、従業員は恒常的に残業していました。ただし、残業をするのが当然という感じで、生産管理や製造工程の効率化の工夫はあまりなされておらず、効率的に業務を行っている様子はありませんでした。
そのような中、労働基準監督署の立入り調査が入り、未払残業代支払と業務改善の勧告を受けました。
当社は、今後どのような方法を採れば良いでしょうか。

(回答)

1 時間外労働増加の要因
 中小企業は、いわゆる納期に追われることが多々あります。また、中小企業の中には、例えば、製品の生産システムが効率的でなかったり、上司が帰るまでは帰りにくいといった雰囲気があるなどさまざまな原因で、恒常的に長時間の時間外労働が存在することがあると考えられます。

2 割増賃金と附加金のリスク
 時間外労働等の割増賃金は、次のとおりです。
 ア 時間外労働は125%以上
 イ 深夜労働は125%以上
 ウ 休日労働は135%以上
 上記の重複の場合、例えば、時間外労働+深夜労働は150%、休日労働+深夜労働は160%になります。
 また、1か月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増が必要で、1か月60時間を超える時間外労働+深夜労働は175%以上の割増になります。
 以上のとおり、時間外労働は多額の賃金支払義務につながり、中小企業にとっては経営圧迫要因となります。
 加えて、企業が労働者から訴訟において残業代を請求されると、裁判所から附加金を命じる判決により企業が支払わなければならない額が2倍になるリスクもあります。

3 長時間残業のリスク
 長時間の残業には、メンタルヘルスのリスクが生じること、疲労による労災発生のリスクが高まること、未払残業代請求のリスクが高まること、労働組合の加入のリスクが高まることなどさまざまなリスクがあります。

4 不要な残業をなくすための対策 
 このため、会社としては不要な残業をさせないための体制の整備とルール作りを行うとともに、そもそも恒常的なダラダラ残業を発生させないような労務管理を構築する必要があります。
 また、部署によって残業の多い少ないの差異が生じているのであればそれを是正するための組織改革、業務処理方法の改善も併せて検討すべきです。

5 回答
 貴社は、今後、ラインの各責任者が生産管理をきちんと行って、ラインごとの生産性を数値で把握するとともに、夕礼の実施と残業による業務内容を明確にさせること、材料の機械への搬入距離の短縮等製造工程の全面的な見直し、残業を許可制にかからせること等を通じ、不要な残業を極力減らす努力を行うべきです。

景品類の提供の注意点

(質問)
 当社では新商品を売り出すに当たり、抽選で景品を配ろうと考えておりますが、景品限度額等、注意点を教えてください。

(回答)

1 景品類とは
 最近では、個人消費が冷え込み、企業間競争も活発になっており、企業においても、顧客開拓や販売促進のために景品を付ける例が増えています。
 景品類の提供については、景品表示法及び公正取引委員会の告示により、景品類の限度額等の規制がなされています。 
 景品表示法では、「景品類」を、①顧客を誘引するための手段として、②事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する、③物品、金銭その他の経済上の利益と定義しています(法第2条第3項)。

2 対象類型
 対象類型は次のとおりです。
 ①一般懸賞とは、商品・サービスの利用者に対し、くじ等の偶然性、特定行為の優劣等によって景品類を提供すること(共同懸賞以外のもの)
 ②共同懸賞とは、複数の事業者が共同して実施する懸賞
 ③総付景品とは、懸賞によらないでつけられる景品類で、ベタ付け景品とも呼ばれます。

3 景品類の限度
 ア 一般懸賞
  ①取引価額が5,000円未満の場合は、景品限度額は取引価額の20倍、②5,000円以上の場合は、10万円、③景品類の総額は懸賞に係る売上予定総額の2%が限度です。
  例えば、1個1万円の商品購入者に対し、抽選で景品を配る場合には、懸賞による場合ですので、景品は合計で上限の10万円以下でなければなりません。

 イ 共同懸賞
   景品類限度額は、取引価額にかかわらず30万円、景品類の総額については懸賞に係る売上予定総額の3%です。

 ウ 総付景品
  ①取引価額1,000円未満の場合、景品類の最高額は200円、②取引価額が1,000円以上の場合は景品類の最高額は取引価額の10分の2が限度です。

4 値引きについて
 例えば、「10個以上買う方には100円引き」、「商品シール10枚ためて送付すれば100円キャッシュバック」などの正常な商慣習に照らして値引と認められるものについては、原則景品類に当たらないとされており、景品表示法の規制に服しません。ただし、減額・キャッシュバックした金銭の使途を制限する場合などは、例外として、値引きではなく、景品類に該当しません。

反社会勢力的との賃貸借契約解除

(質問)
 当社はマンションの賃貸業を行っていますが、賃借人に暴力団員Yがいることが判明しました。
 当社はYとの契約を解除したいと考えているのですが、解除できるのでしょうか。

(回答)

1 暴力団排除条例
 都道府県等地方公共団体においては、暴力団排除条例が制定されています。
 以下では、平成23年4月1日に施行された岡山県暴力団排除条例に基づき、事業活動における禁止行為について説明します。
 ①利益供与及び助長取引の禁止
  事業者は、その行う事業に関し、暴力団の活動を助長し、又は運営に資する目的で、暴力団員等又は暴力団員等が指定する者に対し、金品その他の財産上の利益を供与してはならないとされています(同条例第15条第1項)。
  例えば、みかじめ料の支払、襲名披露会場の貸出しなどです。
 ②暴力団の威力の利用等の禁止
  事業者は、暴力団の威力を利用し、又は暴力団の活動を助長する目的で、暴力団員等をその行う事業に利用し、又は従事させてはならず、その行う事業に関し、暴力団の威力を利用してはならないとされています(同条例第16条)。
  例えば、「うちのバックには○○組がついてるぞ」と言うなどです。
 ③違反時の勧告、公表
  公安委員会は、上記に違反した者に対し、説明又は資料の提出を求めたり、暴力団の排除について必要な勧告をすることができるとされています(同条例第20条、第21条)。
  さらに、公安委員会は、正当な理由なく説明又は資料の提出をしなかったり、勧告をしたときは、その旨及び勧告の内容を公表することができるとされています(同条例第22条第1項)。

2 契約時における措置
 事業者は、暴力団員と契約を締結しないようにすることが重要です。その行う事業に関して契約を締結するときであって、当該契約を締結することにより暴力団の活動を助長し、又は運営に資することとなるおそれがあるときは、契約を締結しないように努めるとされています。
 次に、契約を締結するときは、暴力団の活動を助長し、又は運営に判明したときは当該契約を解除する旨を定めるよう努めるとされています。
 さらに、事業者は、書面で契約を締結するときは、当該契約の相手方が暴力団員でないことを誓約する書面を提出させる等必要な措置を講ずるよう努めるとされています(同条例第17条第1項ないし第3項)。
 以上の契約時における措置は、いわゆる努力義務です。
 しかし、企業は、暴力団と何からの形で関わることにより、社会的に信用をなくしてしまうリスクが高いこと等を踏まえ、これを訓示的な努力義務として捉えるのではなく、具体的に行うべき努力義務として捉えるべきです。

3 契約解除できるか
 貴社は、Yとの間の賃貸借契約において、Yが暴力団員の場合、貴社が契約を解除できる旨の規定があれば、貴社は警察の要請で契約を解除することは当然できます。
 問題は、賃貸借契約書にこのような特約がなかった場合です。この場合も、詐欺による取消等他の解除事由の主張が可能であれば、これを用いることも考えられます。

不倫は犯罪?

(質問)
近頃芸能人の不倫騒動がニュースを賑わせていますが、不倫は法的にどう評価されるのですか。

(回答)

1 不貞行為に関する法制度-刑法-
 まず,表題の疑問,即ち,不倫は犯罪かという問いに対する回答は,「いいえ」となります。
 なお,不倫,即ち配偶者以外の者と性的関係を持つことを,法律上は「不貞」と表現します。
 確かに,日本も,かつては不貞行為が犯罪とされていました。明治時代から戦前にかけて,刑法では,妻の不倫が処罰の対象とされていました(姦通罪)。その量刑は,2年以下の懲役でした。
 ただ,戦後,男女平等の観点から,姦通罪の規定が見直されることとなりました。その際,姦通罪を妻のみならず夫にも適用されるものとして残すか,姦通罪自体を廃止するかで議論がなされたものの,結局,昭和22年の刑法改正により,姦通罪は廃止されることとなり,現在に至っています。
 従って,不貞行為は,現在では,犯罪ではありません。

2 不貞行為に関する法制度-民法-
 まず,不貞行為は,法律上,離婚事由とされています(770条1項1号)。
 また,不貞行為は,原則として,民法上の不法行為(709条)に該当するな行為(違法行為)であるとされています。そのため,不貞行為をすれば,原則として,損害賠償(慰謝料)を支払わなければなりません。
 なお,不貞行為は,1人では行えませんから,損害賠償を支払う義務を負うのは,不貞行為を行った配偶者とその相手の双方となります。
 以下,便宜上,不貞行為をされた配偶者をA,不貞行為を行った配偶者をB,Bの相手をXとして説明させて頂きます。

3 不貞行為と損害賠償(慰謝料)
 では,BとXは,どのような場合でも,Aに対して損害賠償を支払わなければならないのでしょうか。
 不貞行為に基づく損害賠償請求が認められるには,いくつかの要件を満たさなければなりません。即ち,B及びXが,故意又は過失によって不貞行為を行い,AB間の婚姻関係を破綻させ,Aに損害を与えた場合でなければ,損害賠償請求は認められません。

4 故意又は過失
 故意又は過失の対象は,(争いはあるものの)不貞行為時においてBに配偶者がいることであるとされています。
 そのため,Xは,Bが既婚者であることを過失なく知らなければ,損害賠償を支払う義務を負うことはありません。

5 加害行為=婚姻関係の破綻
 不法行為が成立するのは,「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」場合です。そして,不貞行為は,判例上,婚姻共同生活の維持という権利又は法律上保護される利益を侵害する行為として,不法行為に該当するとされています。そのため,BとXが不貞行為をしたとしても,その当時,既にAB間の婚姻関係が破綻していれば,Aには法律上保護されるべき権利又は利益がないとして,B及びXのAに対する不法行為は成立しません。
 そのため,裁判では,不貞行為時に,AB間の婚姻関係が破綻していたか否かにつき,よく争われます。
 婚姻関係の破綻が認められやすい典型的な事例は,AとBが別居している場合です。他方,AとBの夫婦関係が円満を欠いていたにとどまる場合につき,婚姻関係が破綻していたかどうかの判断は分かれるところです。夫婦が寝室を別にし,肉体関係がなかった場合や,一方が借金を抱え,また暴力をふるっていた場合でも,婚姻関係の破綻はないと判断した裁判例もあります。

株式の売渡請求とは

(質問)
当社には、現在、高齢の株主がおり、近い将来相続が発生すると見込まれます。
しかし、相続人となる人は当社や他の株主とは疎遠であるため、当社としては、その人が経営に絡んでくることは避けたいところです。
何かよい方法はないでしょうか。

(回答)

1 相続人に対する売渡請求
 多くの会社は定款で株式に譲渡制限を設けています。株式の譲渡には会社の承認(原則として、取締役会設置会社では取締役会、取締役会非設置会社では株主総会の承認)を得なければならないため、会社にとって望ましくない者が株主になることを防止することができます。
 しかしながら、株式の譲渡制限は、売買や贈与などの特定承継の場合には有効ですが、相続等の一般承継の場合には意味がありません。一般承継は譲渡ではありませんので、会社がそれを承認するかしないかということは問題とならないからです。
このような場合には、定款に定めることで、会社から相続等によって株式を一般承継した者に株式の売渡請求をすることができます。
売渡請求を受けた一般承継人は、売渡自体を拒絶することはできません。

2 売渡請求の手続
 株式の売渡請求は、あらかじめ定款に規定を設けておかないとすることができません。
また、相続等による株式の一般承継を知った時から1年以内にしなければなりません。
そして、実際に売渡請求をする際には、その都度、株主総会で、①売渡請求をする株式の数、②相続により取得した株式を保有している株主の氏名・名称を決定する必要があります。この決議は特別決議ですので、総会に出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
 株式の買取価格については、原則として会社と相続人の協議よりますが、協議が調わない場合には裁判所に申立てをして価格を決めてもらうことになります。

3 相続クーデターのおそれも
 売渡請求の制度は、相続等によって他の株主にとって好ましくない者が株主となることを防止する制度ですが、場合によっては事業承継の妨げになるおそれもあります。
 会社法上、売渡請求についての株主総会決議には、相続によって承継することになる株式はもちろん、相続人となる者がもともと持っていた株式についても、議決権を行使できないからです。
 そのため、例えば、オーナー株主は自分の子供を後継者として考えていたのに、いざ相続が発生したときに、後継者の株主は売渡請求について議決権を行使できず、オーナー家以外の少数株主だけで売渡請求の決議がなされてオーナー家株主が追い出されてしまうことも考えられます。
 このような事態は相続クーデターなどと言われますが、オーナー家以外の少数株主がいるような会社では、売渡請求を導入する際には対策も含めて慎重に検討する必要があります。

再婚と養育費の変更

(質問)
 私は、数年前に離婚しており、子供の親権は元妻にあります。毎月養育費を支払っているのですが、元妻は最近再婚したと聞きました。再婚相手には安定した収入があるようですが、私はこのまま養育費を支払う必要があるのでしょうか。

(回答)

1 養育費の変更方法
 離婚の際に養育費の金額を決めても、収入等の生活状況の変化によって金額が不相当になった場合には、養育費の増額又は減額を請求することができます。具体的には、家庭裁判所に養育費の増減額を求めて調停を申し立て、これが不調となった場合は審判の手続によることになります。

2 権利者が再婚した場合と養育費
 今回のケースのように、権利者である元妻が再婚した場合には、養育費の支払義務をめぐってよくトラブルが生じます。
この点、元妻が再婚しても、再婚相手が子供と養子縁組をしていない場合には、養育費の減額事由には該当しないと考えられています。法的には、再婚相手には子供の扶養義務がないからです。
 もっとも、再婚相手は元妻との間で扶養関係が生じますので、再婚相手の収入が大きい場合、これによって元妻の実質的な収入が増えることになります。そうすると、子供の養育費についても、実質的に収入が増えた元妻の負担割を多くすべきとも考えられます。再婚相手が子供と養子縁組をしていない場合は、再婚相手の収入は考慮しないのが通常の運用ですが、上記のような観点から養育費の減額が認められる可能性もあります。

3 再婚相手が子供と養子縁組をした場合
 再婚相手が子供と養子縁組をした場合には、子供に対して扶養義務が生じます。
 この場合でも、実父である元夫の子供に対する扶養義務がなくなるわけではありませんが、第一次的な扶養義務を負うのは、子供を現に養育している元妻と再婚相手ということになります。
 そのため、養父である再婚相手の扶養が不十分な場合に、実父である元夫が養育費を負担することになります。再婚相手に十分な収入がある場合には、養育費の減額が認められる可能性が高いといえるでしょう。

4 義務者が再婚した場合
 それでは、養育費を支払っていた元夫の方が再婚した場合はどのように考えられるでしょうか。
この場合、再婚によって、元夫と再婚相手との間には扶養関係が生じます。そうすると、再婚相手の収入が少ない場合には元夫の経済的負担が増えることになりますので、そのことが養育費の減額の事由になる可能性があります。
 また、再婚相手との間に子供ができた場合には、さらに扶養対象者が増えることになります。この場合、元夫の収入等の他の要素にもよりますが、養育費の減額が認められることが多いと考えられます。

株主優待のリスク

(質問)
 当社では、ある取締役が特定の株主を優待する商品の供与を行ってきたことが判明しました。
 どのようなリスクがあるのでしょうか。

(回答)

1 株主優待リスク
 中小企業においても、オーナー一族以外の者が株式を保有することは多く見られます。この場合に、取締役が日頃の感謝の気持ちや株主総会を有利に運びたいなどの理由のため、特定の株主に対して一定の優遇を行って、利益供与になってしまうリスクは十分生じます。
 また、中小企業が株主と取引を行うときも、不当に代金を値下げなどしてしまうと、利益供与のリスクは生じてしまいます。

2 株主の権利行使に関する利益供与の禁止
 会社法では、会社は誰に対してであっても、株主の権利の行使に際し、財産上の利益を供与してはならず、これに違反した場合は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処すると規定されています(同法第120条第1項、第970条)。
 この点に関しては、会社が株主総会における有効な権利行使を条件として、株主1人に対してQUOカード1枚500円分を交付したケースについて、裁判所は、①株主の権利行使に影響を及ぼすおそれのない正当な目的で供与される場合であること、②供与の額が社会通念上許容される範囲であること、③株主全体に供与される総額も会社の財産的基礎に影響を及ぼすものでないときは、例外として許されるとされています(東京地方裁判所平成19年12月6日判決)。

3 株主の権利行使に関してとは
 会社法が禁止しているのは、株主優待全般ではなく、株主の権利行使に関しての利益供与です。
 しかし、同法第120条第2項で、特定の株主への利益供与は株主の権利行使に関してと推定されてしまうので、会社としては、株主の権利行使とは無関係という反証に成功しなければ違法になるリスクを負うことになります。

4 回答
 取締役の利益供与が認められてしまうと、その取締役が利益供与罪や特別背任罪等により処罰されるおそれがあるほか、仮にこれらの行為があると、企業の社会的信用を低下させ、さらには株主代表訴訟を提起されるリスクもあります。
 したがって、中小企業においても、役職員に対し、利益供与も含めたコンプライアンスに関する研修を行い、過去の事例を通じて、どのような行為が刑事罰の対象となる行為であるのか、あるいは社会的に許されないのかを周知徹底させることが必要です。

取締役の監視義務違反リスク

(質問)
 当社では、社長がワンマン経営をしていて、会社資産を社長個人の利益のために費消しています。
 この先、社長が取引先から責任を追及されることになれば、社長に一切口出しできない平取締役でも何らかの責任を負うことになるのでしょうか。

(回答)

1 取締役の監視義務
 取締役会は、業務執行を決定すること、代表取締役の選任・解職の職務を行うこと、個々の取締役の執行を監督することという3つの機能を果たすことが求められています。
 こうした取締役会の機能を果たすため取締役会の構成員である個々の取締役は、他の取締役の業務執行を監視する義務を負うものとされています。

2 平取締役の監視義務の範囲
 この点に関しては、株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから、取締役会を構成する取締役は、会社に対し、取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず、代表取締役の業務執行一般につき、これを監視し、必要があれば、取締役会を自ら招集し、あるいは招集することを求め、取締役会を通じて代表取締役の業務執行一般について監視する職責を有するとされています(最高裁判所昭和48年5月22日判決)。
 しかし、昭和48年最高裁判所判決以降の裁判例をみると、必ずしも取締役が監視義務を怠ったとして、第三者に対する責任(会社法第429条第1項)をストレートに認めているわけではありません。取締役会に上程されていない事項について、現実に不正行為が発見された場合や、不当な業務執行の内容を知り又は容易に知りうべきであるのにこれを看過したなどの事情がある場合に、取締役の監視義務違反による責任を認めている裁判例もあります。

3 取締役の職務執行のリスク
 取締役としての監視義務を果たすためには、事実を調査すること、及び不正があれば是正措置を講ずることが必要です。 
 取締役として会社の経営に関与していながら、他の取締役の違法又は不当な業務執行を知り、あるいは知り得べきであったにもかかわらず、何ら適切な対応をとることなく見過ごしたことにより、会社や第三者に損害を生じた場合には、平取締役といえども監視義務違反による損害賠償責任を追及されるリスクがあること自体は認識しておく必要があります。

4 回答
 判例は、取締役の一般的監視義務を認めていますが、取締役会に上程されていない事項についての監視義務の範囲を限定する裁判例も見られます。 
 しかし、取締役会の不開催や会社業務に関与していないことが免責の理由となるのであれば、取締役会が機能しない会社であったり、職務に怠慢な取締役であればあるほど責任を問われることがないという結果になってしまい、取締役に監視義務を負わせた法の趣旨が骨抜きになってしまいます。
 このため、会社経営に何らかの形であっても関与している取締役であれば、監視義務を怠ったことにより会社又は第三者に生じた損害について、任務懈怠の責任を問われるリスクがあること自体には注意すべきです。