当社では、人材確保と割増賃金の抑制、労働時間管理の事務軽減のため、年俸制の導入を検討しています。
どのような点に注意して、年俸制を導入すればよろしいでしょうか。
(回答)
1 年俸制の誤解
中小企業の経営者から年俸制の導入について相談を受けることがあります。ベンチャー企業などで、従業員に労働時間をあまり気にしないで頑張ってもらいたいといったことで導入を検討されるようです。
ところで、中小企業の経営者の中には年俸制だから残業代等の割増賃金の支払は不要と考えている方がいらっしゃいますが、それは全くの誤解です。
また、中小企業経営者の中には、1年に1回年俸を支払えば良いと考えている方がいらっしゃいますが、これも誤解で、1か月に1回は年俸を12で割った賃金を支払う義務があります。
年俸制を導入したからといって、人件費を抑制できるのではなく、むしろ、人件費が硬直化したり、運用によっては、割増賃金が上昇するリスクがあるので、個人的には、中小企業に対しては、年俸制はあまりお勧めしていません。
2 年俸制の導入
どうしても年俸制を導入したいという場合は、年俸制といえども労働時間をきちんと管理しなければならず、法定労働時間を超えた時間については、残業手当の支払義務があります。
そこで、企業とすれば、面倒な労働時間の管理を省くため、固定残業代制度を採り入れた年俸制を導入することが考えられます。
3 固定残業代制度
これは1か月に想定される残業代を基本給にプラスして支払う制度で、例えば、1か月当たり30時間分の残業をしたものとして定額残業代7万円を支払うというものです。
会社は、従業員の労働時間が月30時間未満の場合は固定残業代7万円を支払わなければならず、また、月30時間を超えると固定残業代以外に別途割増賃金を支払わなければなりません。
しかし、この固定残業代制度は基本給と残業代の部分が明確に区分されていること、その固定残業代部分には何時間の残業代が含まれているかが明確にされていること、実際の残業時間がその時間を超えている場合は、別途割増賃金を支払うことが就業規則で明確に規定されて実行されることが必要です。
4 回答
貴社は、固定残業代制度を導入して、基本給と固定残業代を合わせた月額を12倍して年俸制とすれば良いと考えますが、固定残業を超えた残業が発生していれば別途残業代の支払義務があることに注意すべきです。