相続財産とは

(質問)
相続財産についてわかりやすく教えてください。

(回答)

1 相続財産って,何?
 相続財産とは,被相続人(亡くなられた方)が,亡くなられたときに有していた一切の財産をいいます。この定義は,意外に重要ですので,よく覚えておいて下さい。
 なお,当然ながら,相続財産には,プラスの財産もマイナスの財産も含みます。その内訳を調査した上で,相続についてしなければならないことが変わってきますので,相続財産の調査は非常に重要です。

2 相続財産が借金だらけだった場合 
 さて,仮に,相続財産として,マイナスの財産の方が多かった場合に相続をすると,相続人はいきなり借金を背負うことになります。これを避けるには,相続放棄をすることが有用です。
 相続放棄とは,その言葉のとおり,相続を放棄することで,相続放棄をすると,相続人は,被相続人の権利も義務も一切引き継ぐことはありません。
 ここで注意が必要なのは,相続放棄は,自分が相続人となったことを知った時から3ヶ月以内にする必要があるという点です。3ヶ月など,あっという間に過ぎます。身近な人が亡くなった後に,すぐに相続について調査等しなければならないというのは大変なことですが,相続人にはこれからの人生がありますから,この点はしっかりと行動すべきです。
 あと1つ注意をしなければならないのは,相続人が,一定の行為をすると,単純承認,つまりプラスの財産もマイナスの財産も相続することを承認したとみなされるということです。この「一定の行為」とは,例えば,相続財産の一部を使ってしまった場合があげられます。相続財産の全てを調査する前に安易に相続財産に手を出し,その後に多額の借金が見つかったから相続放棄をする…等ということはできないのです。どうぞ,お気をつけ下さい。

3 多額の相続財産があった場合 
 今までの話とは逆に,親が沢山の相続財産を残してくれている場合もあります。非常にありがたい話ですね。しかし,ただ喜んでばかりはいられません。この場合は,相続税という問題が発生してくるからです。
相続税とは,個人が被相続人から相続などによって財産を取得した場合に,その取得した財産に課される税金のことをいいます。
 相続税には,基礎控除がありますので,それを上回る遺産がある場合にのみ,税金を支払わなければならないということになります。基礎控除額は,3000万円+600万円×法定相続人数となります。基礎控除額は,平成26年までは5000万円+1000万円×法定相続人数だったのですが,これが平成27年1月1日以降,先ほど述べた額に減額されました。そのため,相続税を払わなければならない人が一気に増えたわけです。
 そして,相続税は,相続があったことを知った日から,10ヶ月以内に確定申告をし,その申告期限までに納税をしなければならないと定められています。相続税を支払わなければならないのに,何もせず10ヶ月という期間を経過してしまうと,無申告加算税や延滞税を課される危険があります。
 また,10ヶ月の期限内に申告することで,小規模宅地特例や配偶者特例といった相続税の負担を軽減する特例の適用を受けられるというメリットもございます。小規模宅地特例とは,相続又は遺贈により取得した財産のうち,相続開始の直前において,被相続人等の事業や居住の用に供されていた宅地等につき,一定の要件で相続税の課税価格に算入すべき価格を減額することを認めてくれる特例です。例えば,被相続人等の居住の用に供されていた宅地等であれば,330㎡で80%の減額を認めてくれます。この場合,土地の価格が1億円であったとしても,2000万円で相続税の計算ができるわけです。また,配偶者特例とは,被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が,1億6000万円か,配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
 これらは,相続税の算定にとって重要な制度ですので,10ヶ月以内の相続税の納付は重要になってきます。

4 相続税対策とは 
 さて,相続税対策としては,その額を如何に減らすかという対策と,相続税納付の金銭を用意するという対策が考えられます。
 相続税対策としては,生前のうちにできる対策として,例えば,教育資金の贈与が考えられます。国は,教育資金を贈与した場合,贈与税を非課税にするという制度を設けました。通常は,金銭を贈与すると,例えば1500万円以下だと,45%という高率の税金がかかります。
 しかし,平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に,30歳未満の方が,教育資金に充てるために,金融機関等との一定の契約に基づき,受贈者の直系尊属から,①信託受益権を付与された場合,②書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預け入れをした場合,③書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合には,その価格の1500万円までの金額に相当する部分については,贈与税の課税価格に算入されないという制度が設けられました。
 教育資金には,例えば、入学資金の検定料,入学金や授業料,学用品の購入費,更には,学習塾やスポーツ,ピアノといった文化芸術に関する活動の対価等が含まれます。相続税のことを考え,有効なお金の使い方をしたいものですね。
 もう1つの相続税対策としては,相続税納付の金銭を用意するという点があります。相続財産が多くとも,その大半が不動産等容易に金銭に換価できないものであった場合,相続税の納付が難しくなることがあります。
 このようなときに有用なのが,生命保険です。ここで,冒頭の相続財産の定義を思い出して下さい。相続財産とは,被相続人が,亡くなられたときに有していた一切の財産をいいます。つまり,被相続人が亡くなって初めて保険料がおりるという生命保険は,相続財産を構成しないのです。そのため,生命保険金は,原則として受取人が自由に用いることができます。そして,生命保険金は,相続税の対象ではありますが,500万円×法定相続人の人数につき,非課税となりますので,これを有効活用すると良いでしょう。
 相続対策は,生きている内から始まります。相続は,感情の対立で容易に「争族」となってしまいますので,「争族」にならないための対策は非常に重要で,相続は誰しもが経験するものであるということを肝に銘じ,早めに対策をして下さい。