当社では、メンタルの不調のため3か月ほど休職している従業員がいます。
症状に改善がみられるとのことで、復職に向けた協議をはじめたのですが、最初は、短時間での簡単な作業から慣らしていくということなどを検討しています。
ただ、当社の就業規則ではこのような取扱いの定めはありません。
給与の支払いはどうしたらいいでしょうか。
(回答)
1リハビリ勤務とは
心身の故障で休職していた従業員が復職するに際して、いきなり元の業務を行わせるのではなく、短時間の勤務や軽い作業から慣らしていく制度を設ける会社が増えています。
このような形態を、リハビリ勤務等と呼ぶことがあります。
労働基準法等にはリハビリ勤務の定めはなく、会社としてはこのような制度を導入する法的義務はありませんが、制度を設ける場合には就業規則に具体的な定めを置くことが望ましいといえます。
もっとも、就業規則に定めがなくても、当該従業員との個別の合意によって、リハビリ勤務をすることは可能です。
2 リハビリ勤務の法的位置付け
リハビリ勤務といっても、法律的な位置付けは一様ではありません。
大きく分けると、①休職期間を継続させつつ、休職者が出社して一定の期間、簡単な作業等を行うものと、②復職として取り扱いつつ、最初は軽易な業務から段階的に従前の業務に戻していくものがあります。
①は復職に向けたリハビリをしたり、復職が可能かどうかを判断するための期間ですが、②は復職を認めることが前提となっています。
今回のケースでどちらの取扱いをするのかは、従業員の回復の程度や、リハビリ勤務として行わせる作業(業務)の内容などを踏まえて検討する必要があります。
3 リハビリ勤務を導入する際の注意点
上記①の取扱いは、休職者が、休職期間中、自主的に出勤してリハビリすることを会社が認めるものです。そのため、従業員がした作業は労務の提供とはいえませんし、休職期間中ですから、就業規則に別段の定めがない限り、給与は発生しないのが原則です。
また、リハビリ期間中に一定の作業を行っても、それは会社の業務とはいえませんから、作業中に災害が発生した場合でも労災保険は使えません。
就業規則に定めがない場合には、これらの点を説明して当該従業員の承諾を得る必要があるでしょう。
4 制度を導入する場合の注意点
なお、形式的に上記①の取扱いを採用しても、実際にリハビリのための軽易な作業にとどまらず、使用者の指揮命令のもと、会社の業務を行わせているということになれば、給与の支払い義務が生じます。また、そもそも、会社は復職を認めていると判断されるおそれもあります。
加えて、実際に危険を伴う作業に従事させる場合には、たとえそれが労務の提供とは認められないものであるとしても、会社として安全配慮義務を免れることはできないことにも注意が必要です。
リハビリ勤務等の制度は,休職中の従業員のスムーズな復職には有用な制度です。ただし、制度を導入するにあたっては、その法的な位置付けとルールを明確にしておく必要があります。