当社の従業員は、勤務時間外に飲酒運転をして、第一種運転免許の取消処分を受けました。この従業員は営業職で、自動車を運転できなければ営業の業務ができません。
当社は、この従業員を解雇することはできるでしょうか。
(回答)
1 飲酒運転の厳罰化
中小企業では、大企業と同様、営業に力を入れている会社が多いように思われます。卸売・販売業では、従業員の大半が営業職員である会社も珍しくありません。そこで、従業員が免許取消処分により、自動車での営業ができなくなると、会社にとっては、その従業員は不要ということになります。
2 ポイントは「格別高度の専門性」
職種を営業職に限定して採用した従業員が、免許取消処分によってもはや業務ができなくなった場合は、この従業員は、契約上の業務の履行ができないと言わざるをえません。
しかし、タクシー運転手の職務に必要な普通自動車二種運転免許を喪失したとしてなされた普通解雇が争われた訴訟において、採用した職種が一定の資格を求めるようなものであっても、格別高度の専門性を有しないものであれば、解雇できないと判断した裁判所があります(東京地方裁判所平成20年9月30日判決)。そして、「格別高度の専門性」がある資格としてこの裁判例で例示されているのは、税理士、弁護士、医師等です。すると、普通自動車第一種免許は「格別高度の専門性」がある資格とまでは言えないでしょうから、ご質問のケースでは、貴社は免許取消処分を受けた従業員を解雇できないことになります。
3 就業規則に記載があった場合はどうか。
会社において、たとえ、就業規則の懲戒解雇の事由として、「酒酔い運転又は酒気帯び運転をしたとき」と記載されていたとしても、プライベートでの飲酒運転で、会社の信用低下等の実害が生じていない場合には、やはり懲戒解雇は認められないと考えられます。
4 回答
貴社の営業職従業員が自動車の運転を必要不可欠とするとしても、自動車の運転免許は格別高度の資格とはいえないので、解雇することは相当のリスクがあります。
貴社としては、当該従業員に対し、自動車に乗らなくても営業ができる他の会社への転職を勧めることも検討すべきです。