懲戒処分の公表の可否

(質問)
 当社では、先日、遅刻や無断欠勤を繰り返したことを理由として、従業員Yを戒告の懲戒処分にしました。今回の処分については、今後の同様行為の再発防止のため、社内に公表しようと考えています。
公表は問題がないでしょうか。

(回答)

1 再発防止のための公表
 従業員に対して懲戒処分を行う際、当該従業員に処分を告知するだけでなく、処分したことや処分内容を社内に公表したいという相談を中小企業から受けることがあります。
 中小企業としては、問題行為の再発防止のために、懲戒処分に関して会社全体に公表し、周知したいと考えていることが多いようで、確かに、そのような効果も期待できるところだと思います。

2 従業員の名誉にも配慮が必要
 ただし、企業が懲戒処分を公表するに当たっては、処分された従業員の名誉等にも配慮する必要があります。
 裁判例には、処分の公表が名誉棄損に当たるとして慰謝料の支払いが命じられたものもあります。
 また、仮に処分が有効であっても、公表の方法や内容によっては、名誉棄損にあたる場合があると考えられるので、注意が必要です。

3 懲戒処分の公表の仕方
 それでは、懲戒処分を公表する場合、どのように行えば良いでしょうか。
 この点については、人事院作成の公務員の懲戒処分の公表指針が参考になります。 
 当該指針では、公表する懲戒処分として、①職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分、②職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち、免職又は停職である懲戒処分とする旨定めています。
 また、公表内容を、事案の概要、処分量定、処分年月日、所属等の属性としています。
 公表方法については、口頭での公表や掲示板への掲示、電子メールの配信など、さまざまな方法が考えられます。
 ただ、上記指針では、個人が識別されないように公表することを基本とする旨定めています。

4 回答
 貴社の懲戒処分の公表の目的が再発防止にあるのであれば、処分された従業員の氏名まで公表する必要まではないといえます。事案の概要、処分結果、処分年月日等個人が特定されない情報を掲示板へ掲示するぐらいで良いのではないかと考えます。