限定正社員という言葉をたまに聞くのですが,どのようなものですか?
(回答)
1 限定正社員とは
限定正社員とは,勤務地や職種,労働時間が限定されている正社員のことを言います。正社員より,一定の労働条件が限定されています。
この限定正社員は,従来の日本において,正社員が頻繁な転勤や職種転換を命じられ,また長時間の残業に従事しているといった働き方を是正し,ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を実現しやすい雇用形態とすることを目的に,規制改革会議の雇用ワーキング・グループで提案されたものです。
また,最近では労働契約法の改正により,有期雇用の社員が5年以上連続して勤務すると無期への転換権が認められるようになったことから,無期雇用にするとしても限定正社員として採用することを考えている企業もあるようです。
2 限定正社員と正社員の違い
プラスの面では,先ほど述べたように,会社との合意内容により,転勤や職種転換,残業をしなくて良いという点が挙げられます。
反対に,マイナスの面としては,正社員より労働条件が労働者に有利に限定されていることから,賃金は一般的に正社員より低くされる傾向があります。
3 限定正社員は解雇しやすい
また,従事する職種が廃止されたり勤務する支店などが閉鎖された場合には,解雇されやすくなるのではないかと考えられています。
限定正社員が解雇されやすいのはなぜかというと,まず,従業員を解雇するにあたって,労働契約法16条では,客観的に合理的な理由と社会通念上相当であることが求められ,これに反すると権利の濫用として解雇は無効となります。
また,解雇には懲戒解雇と整理解雇(リストラ)があり,このうちの整理解雇には法に定められていない要件が判例によって付加されています。
具体的には,①人員整理の必要性,②解雇回避努力義務の履行,③被解雇者選定の合理性,④手続の妥当性の4つであり,これは整理解雇の4要件と言われています。
さて,限定正社員の整理解雇についてですが,職種や勤務地が限定されているため,企業の解雇回避努力義務の範囲もそれに応じて限定されることになります。
そうすると,その他の3要件を満たせば解雇は有効になり,通常の正社員より解雇が認められやすいということになります。
4 我が国の解雇法制度の問題点
もっとも,現在の我が国の解雇法制度は,労働者の地位を手厚くしすぎており,解雇に柔軟性が全くないことが問題だと思います。労働者にとっては,生活の糧となる給料をもらうことは大事でしょうが,労働者の中には終身雇用制に安住して勤労意欲がなく,自己の権利のみを主張する者もいることは,私の経験からも言えるところだと思っています。
よって,根本的に解雇規制を再度整備し直して,ムチとしての解雇制度があることを認識してもらうことで労働者の働く意識を改革し,より良い企業となること,さらには日本の発展も期待したいと考えています。