当社は従業員から,発熱,咳,関節痛の症状があるとの連絡を受けました。もしかするとインフルエンザかもしれません。
社内で流行しては困るので,就業規則上の規定はありませんが,休業命令を出したいと思っています。その場合,従業員に賃金を支払う必要はあるのでしょうか。
(回答)
1 インフルエンザの恐れのある従業員への休職命令
労働者が伝ぱの可能性のある疾病等にかかった場合などの場合は、当該労働者及び他の労働者の健康・安全を確保するため、使用者の判断によって就業を禁止しなければならないとされています(労働安全衛生法第68条、安全衛生規則第61条)。
2 業務命令権の濫用
しかし、必要性・合理性を欠いた業務命令、不当な動機・目的をもってなされた業務命令、業務上の必要性と比較して労働者の職業上・生活上の不利益が著しく大きい業務命令は、権利の濫用として無効になるとされています。
インフルエンザの強い感染力、流行性、症状等からすると、職場における安全配慮義務を負う使用者としては、インフルエンザの可能性がある労働者の職場への立入りを制限し、自宅で静養させる必要性は高いといえます。
したがって、休業又は自宅待機の業務命令が無効となる可能性は低いと考えられます。
3 休業手当支払の要否
使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合、使用者は、休業手当として賃金の6割以上を支払わなければなりません。
労働者がインフルエンザに感染したことによる休業は、使用者の責めに帰すべき事由による休業には当たらないため、休業手当を支払う必要はないと考えられます。
ただし、医師の診断よりも長期にわたる休業や、インフルエンザかどうか分からないのに、一定の症状があることだけを理由に休業させるという場合は、使用者の自主的判断に基づく休業なので、休業手当の支払は必要であると考えられます。
4 回答
ご質問の状況では、未だインフルエンザの診断書は提出されていないと考えられますが、貴社は業務命令権に基づき、休業命令を出すことができます。
その上で、貴社はなるべく早期に従業員からインフルエンザの診断書を提出してもらうべきです。
インフルエンザの診断書の提出後は、貴社は休業手当を支払う必要はなくなると考えられます。