当社では,以前,顧客に対するアンケートを実施し,回答していただいた中から抽選でプレゼントを送付するというキャンペーンを実施しました。この度,当社の子会社が,このアンケートに書かれた住所宛てに,住宅建築のダイレクトメールを送付することを考えているのですが,何か問題はありませんか?
(回答)
1 情報取得手段としてのアンケート
アンケートは,サービス向上のための情報や,顧客情報の取得のために有用な手段です。
そして,顧客情報,特に名前や住所等の個人情報を取得するため,回答した顧客にプレゼントを送付することも,よく行われます。
2 個人情報は本人のもの
このように,貴社がアンケートを実施して取得した集計結果については,貴社のノウハウになります。
しかし,個人情報については,貴社が投資して収集したものであっても,あくまで個人本人のものです。
したがって,個人情報は,本人の意思に反する取扱いができません。
このような趣旨で個人情報保護法(以下「法」といいます。)が定められており,個人情報を取り扱うにあたっては,この法を遵守する必要があります。本件で注意すべき主な点は,次のとおりです。
3 利用目的の特定・目的外利用の禁止
まず,アンケートに名前や住所等の個人情報を記載してもらうことにより,個人情報を取得する際には,個人情報の利用目的を特定・明示する必要があります(法15条1項,18条1項)。
そして,特定・明示した利用目的と異なる目的で個人情報を利用することは,本人の同意がない限りできません(法16条1項)。
したがって,ダイレクトメールを送付するために個人情報を利用するのであれば,アンケート実施の際に,プレゼントの送付目的に加えて,ダイレクトメール送付目的に個人情報を利用する旨を,明示しておかなければなりません。
4 第三者提供の禁止
また,個人情報は,本人の同意なく第三者に提供することができません(法23条1項)。
たとえ子会社であっても,法人が別ですから第三者にあたります。
したがって,子会社に個人情報を提供するのであれば,この旨もあらかじめ明示し,黙示の同意を得ておく必要があります。
ただし,個人情報の利用目的達成に必要な範囲で,個人データの取り扱いを業者に委託する場合の委託先は,第三者にあたらない旨定められています(法23条4項1号)。
したがって,ダイレクトメール送付を業者に委託する際は,その点に関しての同意が不要です。
5 個人情報の取扱いは慎重に
近年,個人情報の取扱いに対する社会の目は厳しくなっています。
注意すべき点は上記の他にもたくさんありますので,事業者の皆様方におかれましても,情報の管理等に関してお悩みがあり,個人情報保護体制の整備をお考えの方は,一度弁護士にご相談されることをお勧めします。