食品偽装に適用される法律とは

(質問)
 最近,全国のホテルや百貨店で食材の「誤表示」や「偽装表示」が相次いで発覚しているというニュースを見ました。
 当社はこのような偽装表示が生じないよう注意をしていますが,仮にこのような事態が生じてしまった場合について教えてください。

(回答)

1 食品偽装とは 
 食品偽装とは,食品の小売・卸売りや飲食店での商品提供において,生産地,原材料,消費・賞味期限,食用の適否などについて,本来とは異なった表示を行った状態で,流通・市販がなされることをいいます。
 産地や原材料の偽装は以前からありましたが,ここ最近になって,有名ホテルや高級百貨店などで,メニューと異なる食材を提供する「食材偽装表示」が相次いで発覚したことから,再び話題に取り上げられています。

2 食品偽装に適用される法律 
 食品偽装で報道されたものとして,「バナメイエビ」を「芝エビ」と表示したり,「牛脂注入加工肉」を「ビーフステーキ」と表示するものがありました。このような偽装が生じる原因としては,産地や品種によって価格が大きく異なるので,原価を抑えることができるということが挙げられます。
 この食品偽装問題は景品表示法に違反する可能性が高いといえます。
 景品表示法は,実際より著しく優良と消費差を誤認させる行為を「不当表示」として禁止しており,これに違反した場合には消費者庁から行為の差止め等の措置命令が下されます。
 この措置命令に従わないと,事業者の代表者等は2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金が,そして当該事業者は3億円以下の罰金が科されます。
 また,民事上の責任として,食品の表示が「不当表示」に該当する場合,契約の効力が否定されて返金義務が生じます。

3 食品表示法の成立・施行 
 このような食品偽装については,景品表示法以外にも様々な法律によって規制されていますが,それらの法律は十分に機能しているとはいえない状況でした。そのために1つの食品偽装問題が報道されたことを皮切りに,数多くの件が次々と発覚しました。
 そのような中,食品の表示に関する新たな法律として,食品表示法が平成25年6月に成立し,2年以内に施行されることになりました。
 食品表示法は,消費者庁のもとで,食品衛生法,JAS法及び健康増進法の食品の表示に関する規定を総合して食品の表示に関する包括的かつ一元的な制度としたものです。
 この食品表示法は食品の表示を規定する際の「基本理念」や「執行体制」などの枠組みについて定めており,この食品表示基準に違反すると,最大で3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処せられることがあります(これらが併科されることもあります。)。
 消費者庁のもとで商品表示法という新しい法律に生まれ変わったことは,食品表示行政の歴史からみても大きな転換点であるといえます。

4 企業の社会的信用 
 もっとも,食品表示法が成立しただけでは食品偽装はなくなりません。
 一度でも食品偽装を行うと,現在も将来も「消費者をだます企業」との烙印を押されかねません。
 したがって,食材や食品についての正確な知識だけでなく,食品の表示に関する法律の趣旨も汲みとって,表示をする必要があります。

5 表示偽装に関するリーガルチェック 
 食品の表示やその他商品,サービスに関する表示について,少しでも気になることがありましたら,弁護士にご相談ください。