企業が応じなければならない有効なクーリング・オフとはどのようなものでしょうか?
(回答)
1 行使期間はいつまで?
企業は,行使期間内(訪問販売であれば8日以内)にされたクーリング・オフには応じなければなりません。
今回はこの「行使期間内にされた」の意味を説明したいと思います。
まず,簡単な事例を紹介します。A社は,平成25年4月1日,訪問販売により,Bに対し,ベッドを20万円で売り,Bから契約書にサインをもらって,それをBに交付しました。ところが,Bは,4月8日にクーリング・オフの通知を発し,4月9日にA社に到達しました。この事例でBのクーリング・オフは「行使期間内にされた」ものといえるでしょうか。
まず,クーリング・オフの行使期間の8日を数える際,民法の原則と異なって初日が算入されます(特定商取引に関する法律(以下「特商法」といいます。)9条1項)。
したがって,本事例におけるクーリング・オフの行使期間は4月8日までとなります。
2 効果が発生するのはいつから?
次に,クーリング・オフの効果は,これまた民法の原則と異なってクーリング・オフの通知を発した時に生じます。これを発信主義といいます(逆に,効果の発生を通知が到達したときに認める考え方を到達主義といいます)。
本事例においてBがクーリング・オフの通知を発したのは,その行使期間内である4月8日です。
したがって,たとえ通知がA社に到達したのが4月9日であっても,A社は,Bのクーリング・オフに応じなければなりません。
3 消費者に不利な特約の効力は?
さらに発展ですが,仮にA社が契約書に「クーリング・オフは,当社がクーリング・オフの権利について告知してから8日以内に書面が当社に到達しなければ無効とする。」との特約条項を設けていた場合はどうでしょうか。
実は,結論は変わりません。なぜなら、クーリング・オフの規定を消費者に不利に変更することはできず(特商法9条8項),A社の設けた特約条項は,発信主義を消費者に不利な到達主義に変更する条項なので無効となるからです。
以上のような法律上の効果の発生の有無の判断を誤ると大変なことにもなりかねませんので,クーリング・オフ等については弁護士にぜひご相談ください。