当社は、Y社とY社の代表取締役Zを連帯債務者として、100万円を貸し付けています。
当社は、Y社からの支払いが滞ったため、Zに支払いを請求してきましたが、Zは10年以上何の連絡も受けていないので、消滅時効を採用すると言っています。
そのような主張は通るのでしょうか。
また、ZがY社の連帯保証人であれば、違いがあるのでしょうか。
(回答)
1 連帯債務と連帯保証
Zが連帯債務者であっても連帯保証人であっても、Y社の支払いが滞ったときは、貴社は100万円のうち残額があれば、それをすべて返還するよう請求ができます。
連帯保証は、主たる債務の履行を担保することを目的とするため、主債務者と連帯保証人は主従の関係にあると言われています。
これと異なり、連帯債務者の間に主従の関係はないと言われております。この違いが具体的に表れるのが、ご質問のケースです。
2 時効中断事由としての債務の承認
貴社の貸付は商行為になり(会社法第5条)、商法第522条の5年の消滅時効が適用になります。
しかし、一定の事由があれば時効の完成が妨げられます。この時効の完成を妨げる事由を時効中断事由といいます。
そして、時効中断事由の一つに「承認」(民法第147条第3号)があり、「承認」とは、債務者が債権者に対して債務を負っていると認めることをいいます。
例えば、債務者が債務者に対し同債務を弁済することが「承認」に当たります。
そして、ある連帯債務についての債務の承認による時効中断の効果は、他の連帯債務には及びませんが(同法第440条)、これと異なり、債務保証については、主たる債務の債務の承認による中断の効果は、連帯保証人にも及び(同法第457条第1項)、連帯保証人の時効を中断させます。これが、連帯債務と連帯保証の違いが現れる一つの場面です。
なお、債権者による連帯債務者に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても時効中断の効果が及ぶとされています(同法第434条)。
一方、連帯保証人に対する履行の請求は、主たる債務に対する関係でも、時効中断の効果が及ぶとされているため(同法第458条、第434条)、履行の請求の効果に関しては、連帯債務と連帯保証は変わりません。
3 連帯債務のケース
ご質問のケースは、Y社が現在から遡ること10年以内に、100万円の貸付金債務について一部でも弁済していれば、Y社の負う債務の時効は中断します。
しかし、Zは連帯債務者ですので、Y社の債務の承認による時効中断の効果はZに対しては及びません。したがって、Zの債務は10年の経過によって時効が完成しており、Zの債務は時効により消滅します。
つまり、Zの消滅時効の主張が認められるということになります。
4 連帯保証のケース
他方、Zが連帯保証人である場合には、主債務者Y社が現在から遡ること10年以内に、100万円の貸付債務について一部でも弁済していれば、Y社の債務の承認による時効中断の効果がZにも及ぶため、Zの連帯保証債務の消滅時効を中断させます。
したがって、Zの連帯保証債務の時効は未だ完成していないので、Zの消滅時効の主張は通らないということになります。
5 回答
Zが連帯債務者であれば、Zは消滅時効の採用ができますが、Zが連帯保証人であれば消滅時効の採用はできません。