(質問)
我が社は,ゼネコンの下請工事をしています。このたび,工事を孫請業者に発注しましたが,代金の支払いをめぐりトラブルが生じてしまい,孫請業者は,工事を途中で止めて,既施工部分の残代金の支払請求をしてきました。
他方,我が社は,別の業者に工事を完成させてもらうことにしましたが,見積もりを依頼したところ,資材の急騰により,当初予定していたよりも高くなるようです。孫請業者への支払いはどのようにすればよいでしょうか?
我が社は,ゼネコンの下請工事をしています。このたび,工事を孫請業者に発注しましたが,代金の支払いをめぐりトラブルが生じてしまい,孫請業者は,工事を途中で止めて,既施工部分の残代金の支払請求をしてきました。
他方,我が社は,別の業者に工事を完成させてもらうことにしましたが,見積もりを依頼したところ,資材の急騰により,当初予定していたよりも高くなるようです。孫請業者への支払いはどのようにすればよいでしょうか?
(回答)
1 契約解除の範囲
本件で,下請業者としては,契約を全部解除して「残代金を払わない,むしろ既に支払った分も返せ」と言いたいところでしょう。
しかし,判例によると,工事内容が可分であり、しかも当事者が既施工部分の給付に関し利益を有するときは,未施工部分について契約の一部解除をすることができるにとどまります。
本件では,既施工部分を利用して別業者が工事を完成させることができるので,下請業者としては,未完成部分の一部の解除しかできません。
すると,下請業者には,孫請業者に対して既施工部分の代金支払義務があることになります。
2 相殺の可能性
ただし,下請業者がこれを実際に支払わなければならないかは別問題です。
下請業者に損害賠償請求権が発生していれば,その額と代金額とを相殺できます。
契約や約款の規定に基づいて相殺が行われることは,よくあることです。
3 工事代金増額分による相談
また,本件では,当初予定していたよりも工事代金が高くなるので,その分が損害額であるとして,代金額とを相殺することもできます。
ここで注意が必要なのは,相殺できるのが「未施工部分の工事費用」ではなく,「予定していた工事費用を超える額」であることです。
また,資材が急騰しているときは,工事代金が日々刻々と変化します。判例によると,従前の孫請業者との契約を遅くとも解除できたであろうときが損害額算定の基準日となりますから,実際の超過額と相殺できるとは限らない点にも注意が必要です。