粉飾決算のリスク

(質問)
 最近、上場会社の粉飾決算が話題となっていますが、上場していない中小企業が粉飾決算を行った場合には、一体どのようなリスクがあるのでしょうか。

(回答)

1 粉飾決算は,禁断の果実
 中小企業が自己破産を申し立てる場合などに、粉飾決算を行っていることが発覚するケースはしばしばあります。
 企業が粉飾決算を行う理由は、様々ですが、株価を上げるため、株主から業績が上がらない責任を追及されないようにするため、銀行から融資を受けられやすくするためなどが主な理由だと思われます。
 そして、中小企業においては、上場企業のように内部統制体制の整備がなされていなかったり、会計監査人による会計監査が行われていないため、売掛金や在庫商品の帳簿上の水増し等が比較的容易であることなどから粉飾決算が可能となります。

2 粉飾決算の刑事責任リスク
 会社が粉飾決算を行ったことで、銀行の融資をするかどうかの判断に錯誤が生じた結果、銀行から融資を受けた場合には、詐欺罪(刑法第246条第1項、10年以下の懲役)に該当する可能性があります。
 また、会社が粉飾決算を行ったことで、本来であればできなかったはずの剰余金配当を行ってしまうと、違法配当罪(会社法第963条第5項、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金)に該当する可能性があります。
 他にも、会社の取締役が地位の保全などの自己の利益や第三者の利益を図るために粉飾決算を行うと、特別背任罪(同法第960条、10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金)に該当する可能性があります。
 このように、粉飾決算による刑事責任のリスクは、決して軽いものではありません。

3 粉飾決算の民事責任リスク 
 会社が粉飾決算を行ったことで、銀行の判断に錯誤が生じて融資をした結果、融資額が回収不能になった場合には、会社だけでなく、粉飾決算に関わった取締役なども銀行に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
 また、会社が粉飾決算を行った結果、違法な剰余金配当が行われた場合には、違法に配当した利益に相当する額を取締役などが会社に対して賠償することとなります。
 これらの賠償額は、ときには多額になるリスクがあります。

4 粉飾決算を防ぐにはどうすれば良いか。 
 このように、粉飾決算が行われると、それに関与した取締役は、刑事上だけではなく、民事上も重い責任が生じます。
 さらに、粉飾決算が行われた企業であるという評判が広まると、取引先などからの評価が著しく低下するだけではなく、銀行などからも信用されなくなり、融資等に支障が生じるリスクがあります。
 そうなると、経営において致命傷となりかねません。
 粉飾決算を防止するには、日頃から不正な会計処理が行われていないかをチェックする体制を構築するとともに、社内の会計担当者が適切な会計知識を有していることが必要となります。