当社で働いている外国人の従業員Yが、機械を使って作業しているときに怪我をしました。
当社は、当該従業員に対しても、他の従業員と同様に、研修を行ったほか、この機械についての作業手順や注意事項等について記載されている書面を渡していました。
しかし、研修が日本語で行われたことや書面が日本語で記載されていたせいか、当該従業員は、内容をよく理解していなかったようです。
当社に何らかの法的責任が生じるでしょうか。
(回答)
1 増加する外国人の雇用
グローバル化が進んだ現代において、さまざまな企業で外国人を雇用する機会が多くなりました。厚生労働省の調査においても、外国人の雇用は、年々増加しているとされています。
中小企業においても、外国人実習生は数多く存在していますが、外国人を雇用する際には、注意しなければならないことも数多くあります。
2 日本語があまり分からない
外国人従業員の中には、あまり日本語を理解できていないという方も少なくないと思われます。
「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)においては、安全衛生の確保として、①安全衛生教育の実施、②労働災害防止のための日本語教育等の実施、③労働災害防止に関する標識、掲示等、④健康診断の実施等、⑤健康指導及び健康相談の実施、⑥労働安全衛生法等関係法令の周知をすべきことなどが定められています。
企業としては、外国人従業員が理解できる言語や方法によって、前記①~⑥までの措置を行う必要があるとされています。
3 どのような法的責任が発生するのか。
企業は、従業員に対して安全配慮義務を負っており、危険から回避するための安全教育、適切な注意、作業管理等を行う必要があります。企業は、この安全配慮義務を外国人従業員に対しても負うこととなります。
この安全配慮義務に違反した結果、外国人従業員に損害が発生した場合には、企業に雇用契約の債務不履行責任又は不法行為責任に基づく損害賠償義務が発生することとなります。
ご質問のケースでは、貴社は、外国人従業員があまり日本語を理解できないにもかかわらず、その事情に配慮せずに日本語での研修の実施や日本語でのみ記載された書面の交付を行っていると考えられます。
そうすると、貴社は、この外国人従業員が理解できる言語や方法で安全教育等を行っていないことになるので、安全配慮義務を尽くしたと言えず、損害賠償責任を負担するリスクが高いと考えられます。
4 回答
貴社には、外国人従業員も理解することができるように安全教育を行う義務があるので、日本語だけの注意事項を記載した書面を外国人従業員に渡していただけでは、かかる義務を果たしたことにはならず、外国人従業員に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負うと考えられます。
貴社においては、外国人従業員にも理解できる言語で研修を行うことや書面を作成することで、言語の違いを超えて分かりやすく安全教育を行うべきです。