瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求について

(質問)
 当社は建設業者ですが,中古住宅のリフォーム工事を受注し,工事は完成したのですが,引渡から6年経って,工事に瑕疵があることが発覚しました。
 注文主は瑕疵担保責任に基づき損害賠償を請求すると言ってきているのですが,工事請負契約約款によれば,瑕疵担保責任の期間は5年間とされています。  
 当社は注文主からの請求には応じなくてもよろしいのでしょうか。

(回答)

1 瑕疵担保責任の期間 
 工事請負契約約款や民法637条及び同638条には,瑕疵担保責任についての存続期間(1年ないし10年)が規定されています。
 また,新築住宅については,「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が規定されており,瑕疵担保責任の期間が10年と定められています。

2 除斥期間とは 
 そして,これらの期間は,「時効」を定めたものではなく,「除斥期間」を定めたものであるとされています。  
 「除斥期間」とは,一定の期間内に権利を行使しないと,その期間の経過によって権利が当然に消滅する場合の期間をいいます。
 消滅時効と大きく違う点は,①消滅時効の場合は「中断」といって,時効の進行をリセットすることができますが,除斥期間はこの「中断」が認められないこと,②消滅時効の場合は,それによって利益を受ける者が消滅時効を「援用」しなければその効果が認められませんが,除斥期間はこの「援用」がなくても期間の経過により当然に効果が認められるというこの2点です。
 御質問のケースでは,既に除斥期間の5年を経過しているので,基本的には注文主の請求は認められないと考えられます。

3 注文者の損害賠償請求の表明 
 ただし,判例によれば,注文主が,「具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し,請求する損害額の算定の根拠を示すなどすれば,損害賠償請求権が保存される」とされ,「この請求は裁判上の権利行使までは必要ない」とされています(最高裁平成4年10月20日判決)。
 同判決は売買契約の瑕疵担保責任に関するものですが,請負契約の瑕疵担保責任にも妥当するとされています。
 したがって,御質問のケースでも,注文主が引渡から5年経つまでの間に,上記のような損害賠償請求をする旨を表明していれば,注文主の権利が保存されている可能性があります。
 なお,一旦保存された損害賠償請求権は,通常の債権として扱われるので,10年の消滅時効の適用を受けることになります。