先月の社員旅行で、当社の従業員が温泉で足を滑らせて転び、全治2週間の怪我を負いましたが、これは労働災害になるのでしょうか。
また、当社は何らかの損害賠償責任を負うのでしょうか。
(回答)
1 注意一秒,怪我一生
社員旅行を実施している会社は、昔に比べて減ってきているようですが、社員同士の交流を深める手段として、現在も有意義な行事だと思います。
特に、温泉は、疲労回復にも効果的なので、日頃の疲れをとることもできます。
もっとも、その旅行で怪我をしてしまっては旅行が台無しになってしまいますし、場合によっては一生に関わる怪我にもなってしまいます。
2 労働災害が発生するとどうなるか。
労働災害とは、業務上、又は通勤途上の負傷、疾病などのことです。
労働災害が発生すると、会社は補償責任を負い、労働基準監督署にその事故を報告する必要があります。
ご質問のケースは、社員旅行中の事故であり、通勤途上の事故ではないため、業務上発生したことになるかどうかがポイントとなります。
3 社員旅行も仕事なのか。
業務上発生したかどうかは、業務遂行性と業務起因性という二つの基準によって判断されます。
業務遂行性とは、会社の支配下にあることです。業務起因性とは、その怪我などが業務によって発生したことです。
通常、社員旅行のような行事は、強制参加になる場合を除いて、会社の支配下のもとで行われるものとは判断されにくいといえます。
そのため、ご質問の場合も強制参加ではない限り、業務遂行性が認められず、労働災害に当たらないと考えられます。
4 安全配慮義務違反はどうか。
仮に、怪我を負った社員が、事故の前に参加社員全員の飲み会に参加させられて、上司などから何度も乾杯をさせられた結果、酔いつぶれてこのような事故を起こした場合には、会社側に安全配慮義務違反や使用者責任が生じる可能性があります。
ご質問のケースでも、これらの責任が生ずる可能性があります。しかし、社員の不注意が原因であるならば、会社に責任は発生しないと考えられます。
5 回答
ご質問のケースでは、従業員の負傷は通常は労働災害にはなりませんし、貴社が安全配慮義務違反を負うリスクも少ないと考えられます。