自社の商品を倉庫業者に預けていて,地震によりその商品が滅失した場合,倉庫業者に損害賠償請求できるか

(質問)
 自社の商品を倉庫業者に預かってもらっていましたが,地震によりその商品が滅失し,大きな損害を受けました。
 倉庫業者に何らかの請求ができますか?

(回答)

1 損害賠償の請求は難しい 
 上記相談の件ですが,倉庫営業者には,預かった物を善良な管理者の注意をもって保管しなければならない,という義務があります(商法593条)。
 しかし,地震のような不可抗力の場合には,倉庫営業者の不注意による滅失とは認められないため,損害賠償の請求をすることはできません。倉庫契約約款でも,地震の場合には倉庫業者の免責が規定されているのが通常です。

2 事前のリスク管理にも限界あり 
 事後の損害賠償請求が不可能である以上,企業としては,事前のリスク管理による対応が必要です。
まず考えられるのは,地震保険への加入ですが,保険料が高額になる傾向があるため,個々の企業の規模や体力に応じて,リスクと投資のバランスを考えることになります。
 また,在庫拠点を分散化させるという方法も考えられますが,在庫拠点の集約化はコスト削減の有力な手段であり,全国展開しているような大企業でなければ,この方法も現実的ではありません。

3 いかに再建をはかるかが重要 
 大地震などの緊急事態が発生した場合,事前の対策は技術的にもコスト的にも限界があり,万全なものは不可能です。
 そこで,地震の被害を受けたときに最も重要になるのが,いかに早く再建をはかるかということです。政府も,企業支援のための各種の制度を発表しています。 

4 政府による企業支援策(東北大震災を例に) 
 2011年3月11日には未曾有の大災害,東北大震災が起こりました。このような災害では予想もしなかった損害も発生しました。この大震災の後,政府は優秀な技術を持つ企業が破産する事態を避けるため,東北大震災が原因で企業が債務超過に陥っても,地震発生から2年後の2013年3月10日までは,破産手続の開始決定がなされないことを決定しました。
また,中小企業庁による中小企業支援策も発表されていました。内容としては,災害復旧貸付として,日本政策金融公庫及び商工組合中央金庫が別枠で貸付を行い,貸付金利の引き下げも行われるというものです。
 さらに,市区町村,消防署等から罹災証明を受けた企業に限られますが,信用保証協会による別枠での保証も設けられました。
このような企業支援策は,比較的小規模な災害の場合にはなされない可能性はあります。
 しかし,このような支援策がなされないとも限らないので常にアンテナを張っておくことは必要です。
行政や銀行による救済制度を利用しても経営が軌道に乗らない場合,法的な再生を検討する必要もでてきます。再生への着手は,早ければ早いほどその後の再生の可能性が高くなってきます。
 相談者として経営に不安を感じていたら,一度弁護士に相談されることをお勧めします。