受忍限度の判断基準

(質問)
工事に伴う騒音や振動がどの程度まで許されるかは、「受忍限度」の範囲内か否かで判断されると聞きました。
では、「受忍限度」の範囲内か否かは具体的にどのように判断されるのでしょうか。

(回答)

1 受忍限度の判断
 「受忍限度」を超えているか否かの判断については、「侵害行為の態様と侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為の持つ公共性ないし公益上の必要性の内容と程度等を比較検討するほか、被害の防止に関して採り得る措置の有無及びその内容、効果等の事情をも考慮し、これらを総合的に考察して決すベきものである」と判示した判例があります(最高裁判所平成10年7月16日判決)。

2 侵害行為の態様と侵害の程度 
 この点については、工事の具体的な作業内容、騒音や振動の性質、発生頻度や発生時間帯、継続時間、継続期間などにより判断されます。
 裁判例では、被害建物から15メートルの場所で、振動杭打機やクレーンを使用してスチールシートパイルの打込工事をした事案(横浜地方裁判所昭和60年8月14日判決)や、被害建物から6.5メートルの場所でマンション建設に伴うコンクリート打設工事が深夜や午後10時以降に及ぶことが度々あった事案(京都地方裁判所平成5年3月16日判決)などで受忍限度を超えると判断されました。

3 被侵害利益の性質と内容
 この点については、被害が難聴を発症したものや、振動により建物が損壊したり地盤沈下をもたらすような場合は、受忍限度を超えると判断される傾向にあります。
 他方、被害を裏付ける証拠がない場合や、証拠があっても具体性に欠ける場合、また騒音や振動の発生が短期間で一時的なものにとどまる場合は、受忍限度内とされる場合もあります。

4 被害の防止に関して採り得る措置の有無及びその内容
 この点については、苦情が申し立てられたにもかかわらず建設業者が真摯に対応しなかった場合や、騒音や振動を容易に防止できる措置があったのにそれを講じなかった場合は、建設業者側に不利に判断されます。
 反対に、工事期間中に代替居住を用意した場合や、騒音や振動に配慮して工法を変更したような場合は、建設業者側に有利に働く事情とされます。

5 回答 
 受忍限度を超えるか否かは上記のようなさまざまなファクターから総合的に判断されます。