履歴書にウソを書くとどのようなペナルティーがありますか?
(回答)
1 解雇されるリスク
就活はまず「履歴書」からスタートします。
しかし,「資格」や「免許」に書くものが無いという学生は珍しくないと思います。
提出先の企業に入社したいという想いが強いほど,就活に有利になりそうな「資格や免許を取得したことにしたい!」と思いウソを書きたくなる衝動に駆られることは理解できます。
では,「履歴書にウソ」を書いた場合にはどのような法的問題があるのでしょうか。
履歴書のウソは,裁判では「経歴詐称を理由とする懲戒解雇は有効か」という点で争われます。つまりは,履歴書のウソが明らかになったときに,それを理由に解雇されても文句は言えないのかという問題です。
裁判例としては,JAVA言語のプログラミング能力がほとんどなかったにもかかわらず,経歴書にはJAVA言語のプログラミング能力があるかのような記載をした事例において,「重要な経歴を偽り採用された」として,就業規則に基づく懲戒解雇は有効であるとされたものがあります(東京地裁平成16年12月17日判決)。
たしかに,専門的技能が求められる職場では,「実は,できませんでした」では会社は雇用した意味がないのです。この裁判例は市民感覚と一致します。
2 学歴を低く偽ると
では,逆に学歴を低く偽る場合はどうでしょうか。学歴を低く偽ったとしても会社に弊害はないだろうとの感覚が一般的な感覚でしょう。
しかし,次のような判例があるので注意が必要です。
大学を除籍中退していたにも関わらず履歴書に「高卒」と記載し,中卒または高卒対象の職種に応募し採用されていた事例で,これを理由の一つとする懲戒解雇は有効であるとされたものがあります(炭研精工事件最判平成3.9.19)。
この事件の高裁判決は,最終学歴は労働力評価に関わるだけではなく,会社の企業秩序の維持にも関係する事項であることが明らかであり,(入社希望者は)これについて真実を申告すべき義務を有している旨判示しています。
この高裁判決は,学歴のウソ自体が「会社の企業秩序を乱す」という見解に立っていることが分かります。
3 やはりウソはダメ
法はいったん採用した社員を解雇するには非常に厳しい規制をしてはいますが,経歴を詐称して入社した場合には詐称した方が悪いという態度をとっているように思えます。
学生の皆さんは履歴書に限らず,ウソはまずいと認識すべきです。
ばれるとまずいウソほどよくばれてしまいます。
また,就活の時に困ることのないよう「資格」を取ることも一つの方法ですね。