コネ入社は違法ではないの?

(質問)
 コネ入社をよく周りで聞くのですが,これは違法ではないのですか?

(回答)

1 コネ入社とは 
 そろそろ就職戦線が始まっているころと思います。最近景気の回復の兆しがややみられるといわれているものの,大学生にとってはまだまだ就職活動の状況は堅調であるとは言い難いようです。
 そのような中,親御さんや大学の就職担当者としては,縁故採用(いわゆるコネ入社)であっても,何とかして学生の就職先を見つけたいと考えることもあるかもしれません。
 しかし,本来就職先は,学生が自分の力で就職試験を勝ち抜いて獲得するものとも思えます。そこで,縁故採用についてどのような法的問題があるかを考えてみたいと思います。

2 公務員の場合 
 地方公務員法や国家公務員法では,職員の任用は,法律の定めるところにより,受験成績,勤務成績その他の能力の実証に基いて行わなければならないと規定されています。このため,国や地方自治体が縁故採用をすることは,地方公務員法及び国家公務員法違反になります。
 公務員試験の受験要領を見ると議員等のいわゆる口利きにより採用されたことが発覚した場合には,採用を取り消す旨が記載されていることもあります。
 最近では,議員が口利き行為をした際に,その記録を取られて公表されたということもあったようです。

3 民間企業の場合 
 しかし,民間企業についてこのような規定は存在しません。民間企業が性別による差別(男女雇用機会均等法)など,法律が禁じている採用差別に該当しない限り,各企業は,自らの裁量で従業員として採用する者を決めることができます。
 最高裁判所の判例においても,三菱樹脂事件という有名な事件の判決においてこのような考えを採用していることがうかがえます。
 これは,個人だけでなく民間企業においても,憲法上の権利である営業の自由が保障されること等に基づくものです。つまり,どのような人物を採用するかに関しては,企業側の裁量が比較的幅広く認められています。(その反面として,いったん採用した職員を解雇するのは法は非常に厳しい規制をしています。)
 実際のところも,民間企業が取引先とのつながりを強めるために,縁故採用をするということは企業の戦略としてありうるものであり,直ちに違法というのは困難なケースが多いと考えます。このことからも明らかなように,民間企業が縁故採用をしたり,大学関係者が民間企業に縁故採用をお願いしたとしてもそのこと自体で法的な問題が生じる可能性は少ないと言えます。

4 企業や大学からみた場合の注意 
 ただし,あまりに縁故採用の者ばかりの企業だと,企業の活力がそがれてしまうようなケースもあると思います。
 また,厚生労働省は,企業に対して,採用の際には,「応募者の適性・能力のみを基準として採用選考を行うのが基本」と呼びかけているようです。
 いずれにせよ,学生の立場としては,学生時代に様々なことを通じて人間的にも能力的にも自分を磨き,縁故採用を用いなくても就職戦線を勝ち抜くことができるようになるということが重要であると思います。
 他方,大学においても,学生に対して,企業の魅力や将来性はもとより,企業がどのような人材を必要としているか等を積極的に学生に発信していき,学生に積極的に自分を磨いていこうと考えてもらえるような努力をしていく必要があると考えます。