交通犯罪ではどのような懲戒処分が下されるか教えてください。
特に,教員により厳しい懲戒処分が下される場合はあるのでしょうか?
(回答)
1 交通事故と懲戒処分
大変残念なことに、岡山県では、本年1月以降、県内の教員が窃盗未遂容疑、自動車運転処罰法違反容疑、県青少年健全育成条例違反容疑で逮捕されるという不祥事が相次いで発生しています。そして、教員等の不祥事は、往々にしてマスコミに取り上げられ、世間から厳しい目で見られる傾向にあります。
犯罪というと大変遠い存在のように感じられるかもしれませんが、交通事故に限っていえば、誰もが犯しがちな犯罪であって、身近な存在です。
反則金さえ支払えばそれで終わると考えておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、刑事上の責任としてはそれで終わるとしても、本号のテーマにあるように、懲戒処分の対象となる可能性は大いにあります。
一例として、平成25年度に公立学校教職員で交通事故を理由として懲戒処分を受けた人は、なんと284人もいるのです(文部科学省HP)。
今回は、軽く考えてしまいがちな交通犯罪と懲戒処分について検討したいと思います。
2 懲戒処分とは
懲戒処分とは、一般的に従業員の企業秩序違反行為に対する制裁罰をいいます。
懲戒処分には、けん責・戒告、減給、降格、出勤停止、懲戒解雇などの種類があります。
また、懲戒事由としては、経歴詐称、職務懈怠、業務命令違反、業務妨害、職場規律違反、従業員という地位・身分による規律の違反といったものがあります。
懲戒処分は、予め就業規則に懲戒事由と手段が明確に定められていなければ、これをなすことはできません。
したがって、どのような理由で、どのような懲戒処分がなされるかは、会社によって異なることとなります。
3 交通犯罪と懲戒処分
例えば、民間の会社では、勤務時間外の交通事故は、1で述べた懲戒事由の内、従業員という地位・身分による規律の違反という懲戒事由に該当する可能性があります。
そこで、就業規則で「不名誉な行為をして会社の名誉を傷つけたとき」等と定められていたとすると、従業員が交通事故を犯したという事実自体が会社の名誉を傷つけたとして、会社から懲戒処分を言い渡される事例が見受けられます。
ただし、判例も、従業員の職場外の職務遂行に関係のない行為については、企業秩序に直接関連するもの及び企業の社会的評価を毀損するおそれのあるものが規制の対象になるとしており、職場外の行為を理由に常に懲戒処分をすることができるとはしていません。
4 職業による特性
とはいえ、例えば、大学等であれば、教職員という人を教える立場にある人物による犯罪であること、教職員の交通犯罪が大学の評判に大きく関わり、学生、保護者、志願者等の信頼を損ないかねないこと、交通事故に対する世間の目が厳しくなっていること等を考え合わせると、懲戒処分、場合によっては懲戒解雇が適法とされることは十分にあり得ます。
県立高校の管理職(生徒を直接教育指導する立場ではない)にあった人物が夏祭りの打ち合わせの際に飲酒をした上で自動車を運転して帰宅中、検問を受けて酒気帯び運転が発覚し、罰金刑を受けたという事案(よって、交通事故を起こしたわけではない)において、免職処分を適法とした裁判例もあります。