父の死により相続が発生しましたが、私は、他の兄弟に比べ父の仕事を手伝ったり、同居して介護をしたりと献身的に尽くしてきました。
兄弟で平等に遺産を分けるのは納得いきませんので、寄与分を主張したいと思ってます。
どのような場合に認められますか?
(回答)
1 寄与分とは
まず、「寄与分」(民法第904条の2)とは、被相続分との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える行為で、かつ、それにより被相続人の財産を維持又は増加させたことをいいます。これが認められた場合、法定相続分よりも多くの遺産を取得することになります。民法では、寄与分が認められる要件として以下の3つを挙げています。
(1)共同相続人による寄与行為
(2)寄与行為が特別の寄与であること
(3)寄与行為と被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること
2 寄与の態様
また、 寄与の態様(具体的な行動)としては、次のことが考えられます。
・長男として父の事業を手伝ってきた
・被相続人の事業に資金提供をした
・被相続人の娘が仕事をやめて入院中の付き添いをしてくれたなどが該当します。
さらに、寄与分が認められる為には「特別の寄与」であるかどうかが重要になり、
・報酬が発生しない「無償性」
・1年以上の長期間に渡って従事してきた「継続性」(概ね3年〜4年)
・片手間で行ってはいないという「専従性」
・被相続人との身分関係(妻、子、兄弟など)
これらの要件を満たしていることが寄与分獲得に重要なポイントです。
3 寄与分が認められた裁判例
これまでの裁判例を分析すると、寄与分が問題となる事例は、家業従事、金銭支出、療養看護、扶養、財産管理等にまとめることができます。
例えば,療養看護型として,被相続人について常時見守り介護が必要になった後,相続人が3度の食事や排便への対応にも気をつけるような状態になっていたことを認定し,特別な寄与があったことを認め,3年間分合計876万円(8000円×365×3)の寄与分を認めた裁判例があります(大阪家庭裁判所平成19年2月8日審判)。
4 金銭支出型
他方、金銭支出型として次の場合はどうでしょうか。相続人が実質的な一人会社を経営する会社に被相続人が取締役として就任し、会社から報酬を支払っていましたが、実際上は就労の事実はほとんどありませんでした。
この場合、被相続人に対する報酬の支払が寄与分として認められるでしょうか。
実質的には贈与とも考えられるため,寄与分と認定してもよさそうに思われます。
しかし,一般には寄与分の主張は難しいとされています。といいますのも,報酬の支払いはあくまで会社からの支払いであり個人からの贈与とは同視できないこと,被相続人としては会社に不動産を使用させていたり,実質的には会社経営に何らかの助力となっていたりする場合があること等があることから,被相続人の財産が増加したと認定することが困難な場合が多いからです。
5 寄与分の主張に対するリスク回避
いずれにせよ、被相続人との関係の密度の差が相続人間で生じることはやむを得ないところであり、心情的な不満が寄与分の主張としてなされる場合も多いと思われます。
それらの紛争を防ぐためには、遺言を作成することが有効ですが、その内容も寄与分に適切に配慮したものとなっている必要があります。
まずは弁護士にご相談されることをおすすめします。