私の娘は,中学校に入学した頃から悪い友人と交際するようになり,頻繁に家出をしたり警察に補導されたりするようになりました。成人した後も仕事をせず,どこに住んでいるのかわかりませんが,暴力団関係者の男と同棲しているようです。
また,色々なところからお金を借りているようで,一度は500万円の借金を私が肩代わりしたこともあります。
将来,このような娘に先祖伝来の土地を相続させるわけにもいきませんし,娘とは親子の縁を切りたいと思っています。
法律上縁を切ることはできるでしょうか?
(回答)
1 法律上,「勘当」という制度はない
日常では,親子の縁を切るという意味で,「勘当する」という言葉が使われることがあります。
しかし,法律上は,このような制度を定めた法律はありません。
養子縁組に基づく親子関係であれば,離縁することで解消することができますが,実親子については,法律上の親子関係を解消する方法はないのです。
2 親子関係の修復
今回の相談内容のようなケースでは事実上難しいかもしれませんが,親子関係の悪化に何か原因がある場合,冷静に話し合うことで親子関係が修復できる場合もあります。
そのための一つの方法として,家庭裁判所に対して,親子関係調整の調停を申し立てることが考えられます。
調停委員や裁判官などの第三者に言い分を聞いてもらうことで,互いの誤解やわだかまりが解け,意外にすんなりと和解ができる場合もあるのです。
3 排除とは
今回のケースで,どうしても娘に遺産をやりたくないと考える場合,どうすればよいでしょうか。
まず,「娘には遺産を相続させない」旨の遺言書を作成する方法が考えられます。
これは最も簡便な方法ですが,この場合,遺留分まで奪うことはできないので,遺留分減殺請求がなされると一定の遺産は娘のものになってしまします。
そこで,「相続人の廃除」という方法があります。これは,将来相続人となる者が,被相続人を虐待・侮辱したり,著しい非行がある場合に,相続権を失わせる制度で,廃除された推定相続人には遺留分も認められません。
もっとも,相続人の廃除をするためには家庭裁判所の一審が必要となります。今回のケースでは,「著しい非行」にあたると判断される可能性は十分ありますが,被相続人の意思だけで相続人の廃除が認められるものではない点に注意が必要です。
4 親子関係は厄介なことも
親子関係というのは,通常,強い絆で結ばれている分,一度悪化すると厄介なものです。
法律の専門家に事案に応じた適切な法的アドバイスを受けることをお勧めします。