再婚禁止期間違憲判決とはどのようなものですか?
(回答)
1 再婚禁止時間の意味
民法733条第1項では「女は,前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ,再婚をすることができない。」旨規定されています。つまり,この規定は,女性については「前婚の解消又は取消し」から180日を経過しなければ次の結婚ができないとするものです。
そもそも,なぜ女性にのみ再婚禁止期間が定められているのでしょうか。民法772条は,その1項で「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。」と規定しています。そして,2項では「婚姻成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定しています。
大雑把にいえば,①妻が結婚中に妊娠した場合には,夫の子と推定される,②離婚した日から300日以内に生まれた子は,離婚した夫の子と推定される,③再婚した日から200日を経過した後に生まれた子は,再婚した夫の子と推定されるという規定です。
では,ここで頭の体操。
「女性が離婚した直後に再婚。再婚後200日を経過後に子どもが生まれた」というような事案では,上記の②と③の両方に該当します。
これが意味するところは,生まれた子は,離婚した夫と再婚した夫の子どもであると推定されてしまうということです。
つまり,上記②と③の両方に該当する場合には,推定が重複することになるのです。
このような推定の重複を防ぐために,再婚禁止期間(733条第1項に基づき六箇月)が設けられたのです。
2 6か月の期間は本当に必要?
再び,頭の体操。
女性が離婚した当日に再婚した場合を考えてみましょう。離婚した夫の子と推定されるのは300日,再婚した夫の子どもと推定されるのは,再婚した日から200日経過後。ここで,推定の重なる期間が生じるのは何日でしょうか?
答えは,100日です。
3 最高裁判所の判断
民法が定められた明治時代は,重複が生じる100日間に再婚禁止期間を限定しないことは,父子関係をめぐる紛争を未然に防止すると考えられており,当時はその考えは合理的なものとされていました。
しかし,医療技術等が発達した現代社会においては,このような考え方は不合理なのです。
平成27年12月16日付の最判においては,多数意見は,父性の推定が重複することを回避するための期間である100日間は合理性,相当性が認められるとしても,それを超えて再婚を禁止することは正当化できない旨を判示しています。
4 最高裁判所の少数意見
多数意見以外に,「DNA検査技術の進歩により生物学上の父子関係を科学的かつ客観的に明らかにすることができるようになった段階においては,血統の混乱防止という立法目的を達成するための手段として,再婚禁止期間を設ける必要性は完全に失われている」とした裁判官も存在します。
5 今後の流れ
この判決を受け,国会が当該規定を改正するようです。
しかし,判決に従い100日を超える部分に限定して改正するのか,個別の裁判官の意見も踏まえて全面的に再婚禁止期間を撤廃するのかでは異なります。
このような改正の動きについても,今後注目に値すると思います。