インターネット上に個人情報が流出した場合の法的対応

(質問)
 インターネット掲示板に自分の個人情報や名誉を毀損する書き込みがなされた場合の対応として,サイトの管理者や経由プロバイダに対して書き込みの削除や発信者情報の開示の請求の手続きについて教えてください。

(回答)

1 書き込みの削除の手続きについて 
 書き込みの削除請求を受けたプロバイダは,①当該情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があると判断したとき,②当該侵害情報の発信者に対し削除に同意するかを照会し,7日以内に削除に同意しない旨の申出がなかったときに書き込みの削除をすることになります。
 もし任意での削除に答えてもらえない場合には,裁判によることになります。
 これについては本案訴訟によることも考えられますが,迅速な被害救済の方法としては,侵害情報の削除の仮処分を申し立てることになります。

2 IPアドレスとタイムスタンプの開示請求 
 掲示板への書き込みの場合は,まず,管理者からIPアドレスとタイムスタンプ(送信時刻)の開示を求めることになります。
 これについても,任意での開示に応じてもらえない場合の方法として,発信者情報開示の仮処分の申立てが有効です。

3 発信者の氏名等の開示請求 
 次に,開示を受けたIPアドレス,タイムスタンプを基に,プロバイダに対して発信者の氏名・住所等の開示を請求することになります。
 開示請求を受けたプロバイダは,発信者に対して,氏名等の情報を開示することについて意見を聴くことになりますが,通常,任意での情報開示には応じてもらえないので,裁判によるしかありません。
 また,発信者の氏名等の情報については開示の仮処分は認められていませんので,本案訴訟が必要となります。

4 ログ保存(削除禁止)の仮処分 
 しかしながら,プロバイダにはアクセスログ(通信記録)の保存期間が法律で定められておらず,通常3~6カ月しかログは保存されていません。
 そうすると,本案訴訟で発信者情報開示の勝訴判決を得ても,ログが消去されていれば事実上開示は不可能となってしまいます。
 そこで,本案訴訟の提起の前に,ログ保存(削除禁止)の仮処分を申し立てておくことも必要になります。

5 レピュテーションリスク増大の可能性 
 インターネット掲示板への誹謗中傷の書き込みを題材としましたが,インターネット上に公開された情報の削除や発信者の特定は,個人に対する名誉毀損やプライバシー侵害だけでなく,会社や事業者に関する信用毀損のケースでも同様に問題になります。
今後も,この種の相談は増加していくと考えられます。