土地建物の賃貸借契約を締結する際の注意事項とは

(質問)
 土地建物の賃貸借契約を締結する際の注意事項等を教えてください。

(回答)

1 借地借家法の適用のある賃貸借契約 
 土地建物の賃貸借契約を締結する際、借地借家法の適用があるか否かは、契約期間や法定更新の有無、解約に「正当な理由」が必要となるか否か等、貸主借主双方にとって重大な影響を及ぼすことから、慎重に判断する必要があります。 
 それでは、借地借家法の適用のある賃貸借契約とそれ以外の賃貸借契約の区別はどのようにされるのでしょうか。
 この区別については建物の場合と土地の場合で異なり、建物の場合は「建物賃貸借」といえるか、土地の場合は「建物所有目的」の土地賃貸借といえるかがポイントとなります(借地借家法第1条)。

2 建物の場合 
 「建物賃貸借」では、区分所有の対象となるマンション等のように建物の一部であっても独立性が明確である場合は問題がありません。
 しかし、木造家屋一棟の数室を間借りする場合や建物の一画を賃借して営業活動を行うような場合、それが「建物賃貸借」といえるか否かは一義的に明確に判断できるものではありません。
 一般的には「障壁その他によって他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有する」(最高裁昭和46年6月2日判決)場合は「建物」にあたるとされていますが、具体的には契約締結の趣旨や出店形態、賃貸人の管理監督の有無・程度等の事情を総合的に考慮した上で構造上利用上の独立性の有無を判断することになるでしょう。
 裁判例では、デパートでの出店契約について、売り場として区割りされているにすぎないこと、デパート側指示監督で売場の変更等は余儀なくされること等から店舗を支配的に使用してるとは言えないとして借地借家法の適用はないと判断しています。

3 土地の場合 
 他方、土地の賃貸借の場合は、「建物所有目的」といえるか否かがポイントとなります。
 なぜ「建物所有目的」に限られるのかというと、建物所有を目的として土地を賃借した場合、投下資本の回収には長時間を要することから、建物所有目的を有している賃借人は特に保護の必要性が高いと考えられているからです。
 そして、建物所有目的か否かは、主に当事者がどのような目的を有して契約を締結していたのかが基準となりますが、土地に工作物が存在していれば、工作物の物理的形状も当事者の意思を推認する事情として用いられることになります。
 裁判例では、バッティング練習場として使用することを目的としてなされた土地賃貸借について、仮設建物として管理人事務所を建築していたとしても、それだけでは「建物所有目的」とは言えないと判断したものがあります。

4 賃貸借契約書といえども慎重に 
 このように、賃貸借契約締結の際には「建物賃貸借」及び「建物所有目的」の有無について十分に現状を確認の上、検討して、その上で賃貸借契約書の作成を行うとともに、当事者にその効果を説明しておく必要があることに注意する必要があります。