「住宅」の壁にひびが入り一部が剝がれてきた場合、買主としてどのような手段で訴えることができるでしょうか。
(回答)
1 注文住宅と建売住宅
私達が購入する一戸建てには「注文住宅」と「建売住宅」があります。「注文住宅」は建物を建築士に設計してもらい、施工会社と建築工事請負契約を結んで建ててもらうことをいい、「建売住宅」は住宅の売主と売買契約を結んで土地付き建物を買うことをいいます。
「建売住宅」は、前回まで説明した「瑕疵担保責任(民法570条、566条、商法526条)」が適用されます。
これに対し、「注文住宅」は請負契約にあたるので、民法634条以下が適用されます。
2 請負契約の瑕疵担保責任について
請負契約の瑕疵担保責任の特徴は、以下の3点です。
①請負契約の注文者は請負人に対し、瑕疵の「補修」を請求することができます(民法634条)。
②売買契約では、瑕疵の事実を知った時から1年以内に請求しなければならないですが、請負契約では原則として目的物の「引渡し」から1年です(民法637条)。例外として、建物や土地の工作物は5年です(民法638条参照)。
③売買契約の瑕疵は「隠れた瑕疵」が対象ですが、仕事を完成させる義務を負う請負契約では「隠れた瑕疵に」限定されません。
3 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の瑕疵担保責任について
同じ住宅を購入したにも関わらず、建物か注文かで瑕疵の責任内容が異なるのは、購入者にとっては納得がいかないものです。
そこで、住宅購入者等の利益の保護等を目的に制定された法律が「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下「品確法」といいます)です。これは、瑕疵担保責任について、「新築住宅」を対象とし、瑕疵の対象となる部分を、「構造耐力上重要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」として政令で定めるものに限定しています。
しかし、請求できる期間を目的物の引き渡しから10年とし、当事者の合意による特約で排除することはできないとする強行規定であり、保護が図られています(品確法94条1項2項、95条1項2項)。
4 品確法の対象
品確法が保障する「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」以外の「瑕疵」については、民法が適用されます。
例えば、住宅の内装にひびが入った場合は、内装は一般的に「構造耐力上主要な部分」「雨水の浸入を防止する部分」に該当せず、品確法の瑕疵担保責任の対象外となります。
もっとも、住宅の内装のひびが「構造耐力上主要な部分」を起因とする場合には品確法の対象となりうる場合もありますので、判断に困るような場合は、弁護士にご相談ください。