当社の店舗内に気付きにくい段差があり、これまでもお客様の何名かが転倒しています。
もしも転倒等によりお客様に大きな負傷が生じた場合、当社に損害賠償義務は生じるのでしょうか。
また、どのような対策をしたら良いのでしょうか。
(回答)
1 工作物責任
工作物責任とは、建物の崩壊など工作物に起因する事故につき、工作物の設置または保存に瑕疵がある場合に成立する特別の賠償責任です(民法717条)。建物の占有者は建物の設置の瑕疵によって生じた損害を賠償する義務があるとされています。見えにくい段差で過去に何人も転倒している以上、工作物が安全性を欠いた状態で、安全面に欠陥があることは明らかなので、仮に、来客が転倒等により負傷した場合は、工作物責任が認められる可能性は高いといえます。
2 事故リスクの把握
施設内での事故防止策を検討するためには、現状を的確に把握する必要があり、そのためには施設内で起こった事故を把握するほか、事故につながりそうになった事例(ヒヤリ・ハット事例)を収集して活用することが有効です。
収集した事例は「分析」⇒「要因の検証と改善策の立案」⇒「改善策の実践と結果の評価」⇒「必要に応じた取り組みの改善」といったいわゆるPDCAサイクルによって活用していくこととなります。
3 対策
貴社においては、単に危険注意といった貼り紙だけで十分か、顧客の動線も意識した店舗全体としての対応が必要か、幼児や高齢者の施設内への進入の頻度等を検討することになります。
組織全体としての対策は、次のとおりです。
①事故背景を明確にし、それを公表する(情報の共有)。
②事故要因をなくす。
③理にかなった事故防止対策マニュアルを作成し改正を繰り返す。
④事故防止の教育システムを構築する。
そのほか、施設の安全管理については、屋外の看板落下や遊戯具の損壊、倒壊等のリスクもあるので、施設全体としての安全性にも注意を払うべきです。
貴社とすれば、転倒防止のための段差の解消といった抜本的な対応が必要となります。