万が一、犯罪被害に遭ったときどのように対処したらいいですか?
(回答)
1 犯罪被害者とは
池袋駅西口近くの路上で,歩道にRV車が突っ込み歩行者をはねるという事故(事件)がありました。この事故により20代~30代の7名が巻き込まれ,うち20代の女性が死亡しました。
この事故で運転者は,自動車運転処罰法違反(過失傷害)の被疑事実で逮捕されたようですが,被疑者は脱法ハーブを吸っていた旨供述しているようですので,危険運転致死傷罪(故意犯)で起訴される可能性があると考えます。
このような事件に巻き込まれた場合には,巻き込まれた人は「犯罪被害者」と呼ばれます。今回は,犯罪(故意犯)被害者やその家族に対する経済的支援の制度についてお話しします。
2 犯罪被害給付制度
通り魔殺人等の故意の犯罪行為によって家族を亡くした遺族,重大な負傷又は疾病を負ったり後遺障害が残った被害者に対して国が給付金を支給する制度があり,これを犯罪被害給付制度といいます。
この制度は,社会の連帯共助の精神に基づき国が犯罪被害者等給付金を支給し,その精神的・経済的打撃の緩和を図り,再び平穏な生活を営むことができるよう支援することにその趣旨があり,人の生命又は身体を害する罪に当たる行為(過失犯を除きます。)による死亡,又は障害が主に給付の対象となります。
給付金は,遺族給付金・重傷病給付金・障害給付金に分かれますが,最大でも4千万円弱の支給額となっています。
また,犯罪行為による死亡・重傷病又は障害の発生を知った日から2年間を経過した時,又は当該死亡,重傷病又は障害が発生した日から7年を経過した時は,申請ができませんので注意が必要です。
具体的な手続きとしては,住所地を管轄する警察署(申請する人の地元の警察署)又は警察本部に申請書と必要書類を提出することになりますので,(故意の)犯罪被害に遭った場合には,最寄りの警察・警察本部にまず相談して下さい。
3 損害賠償命令制度
犯罪被害者となった場合,上記のような給付金を支給されてもなお填補されない損害が生じている場合も多くあります。
そのような場合,被疑者・被告人と金額面等で話し合いがつかない場合には,民事訴訟を提起するという方法があります。また,当該事件が刑事手続に付されているような場合には,刑事手続きに付随して被害者や遺族による損害賠償に係る民事訴訟手続の特例として,損害賠償命令制度という制度があります。
この損害賠償命令制度は,刑事裁判の起訴状に記載された犯罪事実に基づいて,その犯罪によって生じた損害の賠償を請求するものです。
申し立てを受けた刑事裁判所は,刑事事件について有罪の判決があった後,刑事裁判の訴訟記録を証拠として取調べ,原則として4回以内の審理期日で審理を終わらせて申立てについて決定をします。
この制度は被害者や遺族の損害賠償請求に関する労力を通常の民事訴訟より軽減する仕組みとなっています。
この制度を利用するには刑事事件を担当している裁判所に対して損害賠償命令の申立書を提出する必要があります。
なお,損害賠償命令制度を利用する際に,その手続きについて弁護士にお問い合わせください。