当社では、会社の飲み会で盛り上がり、上司が部下にイッキ飲みさせることがよく行われていました。
すると、ある日、飲み会の従業員Yが翌日に急性アルコール中毒になったが、それは当社に責任があると言ってきました。
こういった場合、当社には責任があるのでしょうか。
(回答)
1 「イッキ」飲みの強要は犯罪の可能性
中小企業に限らず、企業には一人くらい酒豪がいて、昔ながらのイッキ飲みで酒席を盛り上げる人がいるようです。
しかし、会社の懇親会の飲み会には大きなリスクがあります。
というのは、上司からのイッキ飲みを断れない雰囲気を作った上で「さぁ、飲め」といったような事実に断れない雰囲気により、イッキ飲みをして、その結果、従業員に急性アルコール中毒を起こさせた場合には、上司などに、傷害罪(刑法第204条、法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が成立する可能性が高いのです。
なお、「飲め」などといった言葉に出さなくても、飲まなければいけないような雰囲気を作り出すことも強要に当たると考えられます。
また、「イッキ」飲みをさせられた人が死亡した場合には、傷害致死罪(同法第205条、法定刑は3年以上の懲役)もしくは過失致死罪(同法第210条、法定刑は50万円以下の罰金)が成立する可能性もあります。
イッキ飲みは、実は、中小企業にとっては、大きなリスクといわざるを得ません。
2 「イッキ」を止めなかった人は
楽しい飲み会にもかかわらず、上司がイッキ飲みをさせて、部下が急性アルコール中毒になった場合、イッキ飲みを止めなかった人には、傷害罪の共犯(刑法第60条・第204条、法定刑は15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)もしくは傷害罪の幇助犯(同法第62条、第204条、法定刑は7年6月以下の懲役又は25万円以下の罰金)が成立する可能性があります。
なお、酔いつぶれた人を放置して死亡させたようなケースでは、保護責任者遺棄致死罪(同法第219条、法定刑は3年以上20年以下の懲役)が成立する可能性もあります。
3 社内でのいわゆる「押付け」について
これに限らず、会社内では、職務上、上司と部下という職務上の命令、服従の関係があるため、つい職務上の範囲を超えて、イッキ飲みのほか、政治的イデオロギーとか、宗教上の信仰の押付けのリスクもあり得ます。
社内で、そのようなことがまかり通っていれば、中小企業にとっては、大切な人財の流出や従業員のモチベーションの低下、さらには生産性の低下といったことにもつながりかねません。
中小企業は、社長以下、人にはそれぞれ個性と価値観があるという当然の事実を踏まえて、職務上も職務外も良い人間関係を築いていく必要があると私は考えています。
4 回答
貴社において、上司が部下にイッキ飲みをさせていて、急性アルコール中毒の診断書が提出されている以上は、いわゆるアルコールハラスメントに当たりますので、会社は上司とともに部下に聴取を行うとともに、上司に対する懲戒処分を検討することになります。
そして、何よりも重要なことは、イッキ飲みをしなくても、楽しい「飲みにケーション」の場を作って、従業員同士の親睦を図り、企業の人的な足腰の強さを実現すべきです。