養子縁組が無効になる場合とは?

(質問)
 養子縁組が無効になる場合があると聞きましたが,それはどのような場合ですか?

(回答)

1 養子縁組届出の仕組み 
 ある人が養子となろうとする場合,養子縁組届出を市役所等に提出する必要があります(民法700条、739条)。
 もっとも,養子縁組の成立には社会通念上親子と認められる関係を成立させる意思が必要となり,これを欠く場合は,養子縁組が無効となります。
 ただし,養子縁組自体は形式的な書類さえ整っていれば受理されることから,本来無効であるはずの養子縁組も届出により形式的に有効とされる可能性もあるのです。

2 養子縁組が無効となる場合 
 ここで,養子縁組の有効性と関連して,相続税の計算における基礎控除額の算定の考えも参考になるので御紹介いたします。すなわち,相続税の基礎控除額等は法定相続人の数により算定されますが,算定の際に考慮できる養子の数には一定の制限があり,かつ,養子を相続人の数に含めることで相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合は,上記基礎控除額等の算定の基礎に含めることはできないとされているのです。
 仮に上記の縁組意思もなく専ら相続税負担回避のためだけに養子縁組を行っている場合には当該養子縁組自体が無効とされる可能性もあるでしょう。

3 養子縁組無効の判断の参考となる事例 
 名古屋家裁平成22年9月3日判決によると,養子縁組に否定的な発言を行っていたこと(当事者の言動),当時84歳であり認知証、糖尿病等と診断され,寝たきり,胃瘻からの経腸栄養,失語の症状を呈していたこと(被相続人の年齢や心身状態),被相続人の夫に対してしか縁組意思の確認をおこなっていないこと(被相続人に対する縁組意思の確認の程度),縁組届に実際に署名押印したのは被相続人の夫であったこと(縁組届出提出の経緯)などから被相続人は縁組意思を有していなかったとされています。
 もちろん最終的には個別的な判断が必要となりますが,これらの点を意識することが有益であると考えられます。