遺産相続が発生し,非嫡出子の存在が明らかになりました。
非嫡出子の相続分はどれくらいなのでしょうか?
(回答)
1 嫡出子と非嫡出子の違い
「嫡出子」とは法律上の婚姻関係にある夫、妻の間で生まれた子どもをいいます。
具体的には次のとおり。
・婚姻中に妊娠をした子ども
・婚姻後201日目以後に生まれた子ども
・父親の死亡後、もしくは離婚後300日以内に生まれたこども
・未婚時に生まれて認知をされ、その後に父母が婚姻した子ども
・未婚時に生まれてから、父母が婚姻し、父親が認知をした子ども
・養子縁組の子ども
以上の条件に当てはまる子どもを「嫡出子」といい、非嫡出子は、法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれたこどもであり、且つ上記の「嫡出子」の具体的な条件に当てはまらない子どもをいいます。
2 非嫡出子と嫡出子の相続分は同じ
平成25年12月5日に、民法の一部が改正する法律が成立し、それまで非嫡出子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分を改正し、非嫡出嫡子も嫡出子で違いのあった法定相続分が同等になりました。
同等になった理由は、同じ母親から生まれたにも関わらず、不公平が生じている事実に法の下の平等に反するのではないかという指摘が従前からなされており、平成25年9月4日の最高裁判所の判決において、今までの法律が「非嫡出子」に対して不公平であり、違憲であるという判断が下されたからです。
3 非嫡出子の相続分が改正後の相続分にならないケース
改正された新しい法において、最高裁判所の判決日以降に開始した相続に関して適用することを定めています。相続は被相続人の死亡によって開始されますので、平成25年9月5日以降に亡くなった場合が適用されます。
したがって、平成13年7月1日(今回の最高裁判所の決定の事案における相続開始日)~平成25年9月4日(決定日)の期間中に相続開始をした場合であれば、「非嫡出子」であっても「嫡出子」と同じ法定相続の割合になります。
適用されないケースで考えますと、この期間中に遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった際は法律関係には影響ありません。
つまり、遺産分割協議で審判が確定している場合や、協議が成立している場合は「非嫡出子」の相続の割合は「嫡出子」の2分の1のままになります。
4 非嫡出子がいる場合の相続における争いを回避するには
非嫡出子(婚外子)がいるというだけ、普段から顔を合わせているような相続人にとっては、非嫡出子にも相続分を分け与えることは苦痛かもしれませんが、相続人であれば非嫡出子にも遺産をもらう権利があります。
こういったトラブルを避けるために、何ができるのかを確認しておく必要があります。
5 認知をしておく
例えば、男性が結婚後に配偶者以外の女性との間で子どもが生まれた場合などです。不倫や浮気でできてしまった子どもでも、父親が認知をすれば「非嫡出子」として相続人となり得ます。
そのために、いざ相続する際に遺産分割協議(相続人全員で話し合いをする)を行うのが難しくなり、揉める可能性が高いことが容易に想像できます。
6 遺言書を作成しておく
話し合いだけで解決をすれば良いのですが、相続手続きを進めている中、被相続人が亡くなられた後で「非嫡出子」の存在が発覚することもあります。急に出てきた法定相続人に、遺産を渡したくない人もいるのではないでしょうか。
その争いを避けるためには、被相続人が亡くなる前に「遺言書」を書き残してもらうのが一つの方法です。遺産の分割の方法を指定していれば、余計な話し合いをする必要はなくなります。
被相続人が生きている間に話し合いをして、法定相続人が誰であり、遺産に、どんなものが、どれだけ残っているのか確認をしておくことが重要です。
誰が法定相続人になるか確認をしておくことで、「非嫡出子」の急な出現による混乱を回避できます。
例え話し合いをしていくうちに、「非嫡出子」がいることが発覚しても、被相続人が生きていれば建設的な協議が可能です。