当社は、賃貸マンション業を行っているところ、賃料の支払いが相当滞っている入居者に対し、賃貸借契約を解除する旨の配達証明付内容証明郵便を送ったのですが、賃借人の受領拒絶により返送されてきました。
この場合、賃貸借契約は解除されているのでしょうか。
(回答)
1 相手方に届かないとき
ご質問のケースのように、相手方の受領拒絶等により配達証明付内容証明郵便が届かずに返送されてくることがあります。
配達証明付内容証明郵便が相手方に届かずに返送されてくる場合としては、①相手方が受領を拒絶した場合のほか、②留守であった場合、③居所不明の場合があります。
では、これらの場合、法律的に意思表示も相手方に到達していないかというと、そうではありません。
実は、配達証明付内容証明郵便が①~③のどの理由で返送されてきたかによって異なるのです。
2 受領拒絶の場合
具体的には、②の留守の場合や③の居所不明の場合は、法律的にも到達したことになりませんが、①の受領拒絶の場合は、法律的には到達したものと扱われるのです。
これは、「到達」とは、相手方が現実に通知した中身を見たときではなく、常識的にみて、相手方がその通知を知り得る状態になることをいうとされているからです。受取拒絶は、その通知を知ろうとすれば知ることができる状態になっているため、到達と扱われるのです。
したがって、貴社の賃借人に対する賃貸借契約の解除の意思表示は、到達したものとされますので、賃貸借契約の解除が認められることになります。
なお、この度の民法改正では、正当な理由なく、意思表示の通知が到達することを妨害したときには、その意思表示は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなすとする規定が新設されています。
3 居所不明と留守の場合
③の居所不明の場合については、貴社は、公示送達(一定期間裁判所の掲示板に掲示することにより送達の効果を生じさせる方法)を用いることによって、解除の意思表示や催告を相手方に到達させることができます。
また、②の留守の場合については、公示送達は使えませんので、留守でない可能性が高い休日などに届くようにするなど工夫が必要です。
なお、契約書において、住所変更の届出を怠ったことにより通知等が相手方に届かない場合に、「最後に届け出た住所に通知すれば、意思表示が到達したものにみなす」旨を規定しておくと、相手方の居所不明や留守のリスクに対応できることになります。
4 回答
賃借人の受領拒絶の場合は解除の通知は送達したことになりますが、賃借人が留守の場合には、居所不明の場合、送達したことにならないので、公示送達などの方法を検討しなくてはなりません。
そこで、居所不明の場合に備えて、最後に届け出た住所に通知すれば意思表示が到達したものとみなす旨を、契約書で合意をしておくことがリスク回避の一つの手です。