Aは、Bから老後の住まいとして建物の賃貸借契約の締結の申入れを受けました。ところが、Aは、Bが高齢者であるため、もしも、Bが突然死亡してしまった場合、どうなるのか心配となりました。賃借人が死亡した場合の賃貸借契約に関する法律問題を教えてください。
(回答)
1 高齢化問題と賃貸借契約
高齢者に対して建物を賃貸する場合,賃貸人の悩みとして,このような相談はよくあります。高齢化が進む中で,賃貸住宅で独り暮らしをする高齢者も増え、このような問題も増加していくことが見込まれます。
2 賃借人が死んでも、賃貸借は終わらず
賃借人が死亡したとしても、賃貸借契約は終了しません。使用者貸借契約と異なり、賃貸借契約は、賃借人の死亡により当然には終了しないため、注意が必要です。
では、特約で「賃借人の死亡」により契約が終了すると定めることはできないでしょうか。結論からいえば、この条項は無効となる可能性が高いです。「賃借人の死亡」を契約の終了事由とする条項は、不確定期限の定めと解されます。不確定期限の到来によって終了する契約は一般的に借家人に不利であって、借地借家法第30条によって無効となると考えられるためです。
このように賃借人が死亡したとしても、賃貸借契約は当然には終了せず、契約の効力は続くことになります。相続人がいれば、賃貸人の地位が相続人に承継されます。
3 契約の解除と遺品の処理
賃借人の死亡で問題となるのは、契約の解除と遺品を誰がどのように処分するかです。
まず、相続人がいる場合は、相続人を調査して、賃貸人と賃借人の相続人間で契約を合意解除したうえで、遺品の処分など原状回復を求めます。特に、相続人が複数いる場合には、賃借人たる地位は、相続人間で準共有となるため、相続人全員との間で合意解除しなければならないため、注意が必要です。契約締結時に、賃借人の相続人の状況をある程度把握しておかなければ、リスクとなる可能性があります。
次に、調査の結果、相続人がいなかった場合はどうでしょうか。賃借人に身寄りがない場合や負債をかかえているため相続人が相続放棄をした場合が考えられます。この場合、賃貸人が勝手に遺品等を処分するわけにはいかず、賃貸人から相続財産管理人の申立てを相続財産管理人と交渉して、契約の解除等の処理を行う必要があります。ところが、相続財産管理人の申立ては、申立人が予納金の支払いが必要となる可能性があり、相続財産が少なければ、申立人の持ち出しとなってしまうリスクがあります。
このように高齢化問題にともなって身近な契約にも法律問題が生じます。賃貸借契約に関するトラブルやリーガルチェックなどは弁護士にご相談ください。