隠し子と相続

(質問)
 先日、Aが死亡しました。相続人には妻のWと子のXがいます。W、Xは、遺産分割協議を行い、Aの遺産のうち、Wが預貯金、Xが土地を相続することになりました。
 数日後、Aの遺言が発見され、「Yを自分の子として認知する」と書かれていた場合、遺産分割協議の効力はどのようになるでしょうか。または、認知の訴えが提起され請求が認容された場合はどうでしょうか。

(回答)

1 隠し子と相続問題
最近のニュースで、某資産家が亡くなり、遺産を巡って隠し子が続々と名乗りをあげていることが話題になっています。最近は、離婚の件数や事実婚の件数が増えていますので、今後、実は腹違いの兄弟姉妹がいたというケースでの相続が問題となるかもしれません。

2 遺産分割の当事者を除外してされた遺産分割の効力
通常は、相続関係を調査していれば、戸籍に記載のある隠し子には気付くことができますが、ごくまれに調査を怠り、遺産分割協議後に子の存在が発覚する場合があります。
遺産分割の当事者である相続人を除いて行われた遺産分割協議は無効となるとされます。そのため、遺産分割協議を行った後に、新たな相続人である子の存在が発覚した場合は、その遺産分割協議は無効であって、その相続人を加えて遺産分割協議をやり直さなければなりません。

3 遺産分割後に認知がされた場合
隠し子の発覚で専ら問題となるのは,遺産分割協議後に,認知がなされたケースです。認知(民法第779条)とは、法律上の婚姻関係によらず生まれた子を父又は母が自分の子であると認める行為です。認知は遺言によってもすることができ(民法第781条第2項)、これを遺言認知と言います。また、被相続人の死後に、検察官を被告として、死亡後3年以内に認知の訴えを提起することもできます(民法第787条)。隠し子が婚外子であった場合は、認知されることで、親子関係が成立し、相続権が発生します。
 事例のように、遺産分割協議後に遺言認知がなされていることが発覚した場合や認知の訴えが提起され認容された場合、認知は出生時に遡って効力を生ずるため(民法第784条)、相続人を1人欠いていたものとして、無効となるとも考えられます。しかし、民法910条は、相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産分割の請求をしようとする場合には、遺産分割の効力を有効と扱い、新たな相続人にはその相続分に応じた価額支払請求権を与えるという扱いをしています。つまり、この場合は、遺産分割協議をやり直す必要はなく、適切な金額を新たな相続人に対して支払うことで足ります。
 相続開始後に隠し子が見つかった場合では、それまで交流がなかっただけに紛争化してしまうケースが多々あります。相続に関する紛争は、弁護士にご相談ください。