コロナウイルスの影響で売上げが落ちたら、会社としては経営することが困難になりますので,解雇されたとしても仕方がないということになるのでしょうか?
(回答)
1 労働者の解雇
実は,労働者を解雇するということは,それほど簡単なことではありません。
懲戒解雇などは,違反行為を理由として解雇するものですが,整理解雇ということになれば,経営上の理由から余剰人員を削減するということになるので,解雇が有効かどうかはより厳格に判断されることになります。
解雇された労働者が,解雇が無効であると主張して,会社に復帰させるよう求めたり,損害賠償を請求したりして訴訟になっているケースもあります。
2 解雇が違法になるケース
一般的には、⑴人員削減をする必要性があるか、⑵できる限り解雇を回避するための措置が尽くされているか、⑶解雇対象者の人選基準が合理的であるか、⑷労働者への説明など手続が妥当であるか、によって解雇の有効性が判断されます。
たとえば、今回のコロナウイルスに関していうと、雇用調整助成金といって、従業員への休業手当の支払の助成を受けることができる制度もありますよね。そのような支援策を利用していない場合などは、⑵できる限り解雇を回避するために措置が尽くされていない、ということになり、解雇は無効と判断される可能性があります。
3 契約社員の場合
期間の定めのある契約社員などは、基本的に期間満了で雇止めできることになります。
しかし、期間満了による雇止めだとしても違法と判断される場合があります。
たとえば、①有期労働契約が過去に反復して更新され、期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない状態である場合や、②長期にわたる更新がなかったとしても、これまでのお互いの言動や認識からして長期間の雇用を前提としていたなど、労働者において有期労働契約が更新されるものと期待する合理的な理由がある場合です(労契法19条)。
この場合には、単に期間満了だから雇い止めができるというわけではなく、雇止めが適法かどうかは、先ほど話した整理解雇の要件に従って判断されることになります。
期間満了を待たずに、契約を終了することになった場合はどうかといいますと、期間の定めのある契約では、その期間は雇用することが約束されています。そうすると、整理解雇が有効かどうかは、期間の定めのない労働契約を結んでいる場合の解雇よりも、より厳しく判断されることになります(労契法17条1項)。
4 内定取り消し問題について
採用内定の場合も、一般的には労働契約が成立していることになります。
そうすると、コロナウイルスによる経営の悪化を理由として採用内定の取消しをする場合でも、整理解雇の要件にしたがって判断されることになり、採用内定の取消しが無効となる可能性もあります。
5 まとめ
コロナウイルス収束の兆しが見えない中、経営者、労働者双方にとって厳しい状況は続きそうです。
労働者としては、解雇を伝えられたとしても、助成金などを利用して雇用をつなぎ止めるよう求める必要があります。
経営者としても、経営が回復したときに人材が流出しないように、従業員の雇用を維持していく必要がありますし、これまで述べたように解雇は簡単にできないことを念頭において、助成金などの方法をまずは検討することが必要になってくると思います。