緊急事態宣言から法律を考える

(質問)
 4月7日に緊急事態宣言が出され、外出自粛や休業要請という言葉をよく聞くようになりましたが、緊急事態宣言とはどういうものでしょうか?
 

(回答)

1 緊急事態宣言とは
緊急事態宣言の根拠となる法律は、新型インフルエンザ等対策特別措置法で、略して特措法と呼ばれています。2012年に公布されていたものですが、この3月に、新型コロナウイルスにも適用できるよう改正されました。
今回の新型コロナウイルスは、政府が、指定感染症としました。既に制定されていた特措法は、「新感染症」に対しては緊急事態宣言を出せますが、指定感染症に対しては、緊急事態宣言を出すことができない仕組みになっていました。特措法を改正して、今回の新型コロナウイルスを対象にするのに時間がかかったのです。
私権が制限されるとよく言われますが、外出自粛や、施設の使用制限は、国民の行動を、政府の指示によって制限するというものですよね。そういった法律を制定するので、審議にも時間がかかるということになります。
それから、緊急事態宣言を出すにも、法律に要件が定められています。
全国的にまん延している場合に、緊急事態宣言を出すことができるとされていますが、全国的にまん延しているといえるのが、急激に感染者が増え始めた4月7日の段階であったと判断されたのです。
もっと早い段階で宣言することもできたと思います。

2 緊急事態宣言で何ができるか。
内閣総理大臣が、緊急事態を宣言します。
そうすると、対象地域の都道府県知事が、感染防止に必要な協力を要請・指示できる、というものです。
具体的には、要請できることとして、住民に対して外出自粛の要請、民間企業に対して休業の要請、学校などに対して休校の要請、イベントの主催者に対して開催しないよう要請などです。
そして、強制的にできることとして、臨時の医療施設をつくるために、土地や建物を収用する、医薬品や食料品など、必要な物資の売渡しを業者に要請し、収用することが挙げられます。
ヨーロッパなどでは、ロックダウンといって、強制的に都市封鎖がされましたよね。出歩いている人から罰金をとったりしていました。
しかし、日本の法律による緊急事態宣言では、外出禁止命令などの、強制力をもった都市封鎖をすることはできません。あくまでも、自粛要請、施設の使用制限の要請にとどまります。要請に応じなかったとしても罰則はありません。

3 休業補償について
強制的に収用されたものについては、政府から損失が補償されますが、休業要請については、特措法では補償がされるという法律の仕組みにはなっていません。
しかし、休業要請がされれば、形としては自主判断とはいえ、実質的には休業せざるをえませんよね。
4月17日現在では、持続化給付金というものが検討されています。売上げが前年同月比で50%以上減少していることを要件として、法人へ200万円、個人事業主へ100万円が支給されるものです。
地方自治体も休業補償を検討しています。たとえば大阪府は、一律に、個人事業主に50万円、中小企業に100万円を支給することを検討しています。
しかし、国の制度にしても、地方自治体の制度にしても、議会を開いて決議されてから支給されるものなので、補償は遅れることになります。