先日の大雨と土砂災害で会社の事務所が一部損壊してしまいました。事務所は賃貸物件なのですが、修繕は当社がしなければならないのでしょうか、大家さんがするのでしょうか。
また、倉庫が浸水して商品の材料等がだめになったため、取引先への納期が守れなくなってしまったのですが、このような場合でも納期遅れの違約金を支払わなければならないのでしょうか。
(回答)
1 賃貸物の修繕
賃貸人には、賃貸物を賃借人に使用収益させる責任があり、そのために必要な修繕は賃貸人の義務です。そのため、賃借人の過失によって物件が損壊した場合でなれば、原則として賃貸人が修繕費を負担することになります。
もっとも、賃貸借契約書の中に、天災による損壊等の修繕の責任を賃借人が負担するという条項が入っている場合があります。このような条項があるからといって常にその法的効力が認められるわけではありませんが、注意が必要です。
2 賃貸物の損壊と賃料減額
災害などで賃貸物自体が滅失した場合、賃貸借契約は履行不能によって消滅します。
これに対して、賃貸物の一部が滅失した場合には、賃借人は、滅失した割合に応じて賃料の減額を請求することができます。また、残存する部分のみでは賃貸借の目的が達成できないときは、賃借人は契約を解除することができます。
賃借人は、賃貸人に賃貸物の修繕請求をしつつ、修繕が終了するまでの間の賃料の減額を求めることもできます。
なお、賃貸人には賃貸物を修繕する義務がありますが、これは賃貸人自身の権利でもあります。賃貸物を修繕するために賃借人が一時退去する必要がある場合、賃借人はこれを拒絶することはできません。
3 災害と履行遅滞
債務者が契約期限までに債務を履行できなかった場合、履行遅滞に基づく損害賠償責任が生じたり、契約の解除事由になることがあります。
ただし、履行遅滞として債務不履行責任が生じるのは、あくまでも債務者に帰責事由がある場合です。
災害によって材料が滅失したことで納期に間に合わないことは、材料の保管方法が不適切であったような場合を除き、不可抗力であるといえます。そのため、今回のケースでも、原則として、債務者には過失がなく、履行遅滞の責任は生じないと考えられます。
もっとも、契約書において、債務者が期限までの履行を保証している等、天災等の不可抗力の責任を債務者が負っていると解される場合には、損害賠償責任が生じることもあります。その意味で、災害のような事態で契約通りの債務を履行できなくなった場合の責任について、普段から契約書の条項がどのようになっているか注意を払う必要があります。