商品の性能や品質の過大説明による契約締結のリスク

(質問)
 当社は物品の販売を行っていますが、販売実績を上げようとして商品の性能や品質を過大に説明して、大量の契約実績を上げている従業員がいます。また、その従業員はかなり強引に顧客に購入をすすめているようです。
 この場合、当社にはどのようなリスクがあるでしょうか。

(回答)

1 消費者契約法リスク
 消費者契約法は、消費者と事業者の情報力・交渉力の格差を前提とし、消費者の利益擁護を図ることを目的としています。
 事業者の不当な勧誘により消費者が契約を結んだ場合には、消費者はその契約を取り消すことができます。
 取消事由は、以下のとおりです。

 ア 不実告知(同法第4条第1項第1号)
   重要事項について事実と異なる内容の説明を受けたケースのことです。例えば、羽毛100%の布団であるとの説明を受け購入しましたが、実際には羽毛50%にも満たないものであったというような場合です。
   この場合、羽毛100%であることは消費者が契約を締結するかしないかの重要な判断材料であり、羽毛100%であるとの説明を信じて契約を締結したので、重要事項に不実の告知があったことになり、契約を取り消すことができます。

 イ 断定的判断の提供(同法第4条第1項第2号)
   例えば、必ず儲かりますなどというように将来の不確実な事柄について、事業者が断定的な判断に基づいたことを提供することです。

 ウ 不利益事実の不告知(同法第4条第2項)
   商品の欠点等の不利益をあえて言わないことですが、単に言わないだけではなく、その前に利益になることを告げたり、不利益の不告知が故意でなければなりません。

 エ 不退去(同法第4条第3項第1号)
   不退去とは、自宅に訪問した販売員に対して「要りません!」と断ったにもかかわらず、執拗に勧誘を繰り返すため、消費者が困ってしまいどうして良いか分からない状態で、結果的に契約を結んでしまったような場合が考えられます。
   この他、退去すべき旨の意思表示には直接的・間接的を問いませんので「帰ってください!」「結構です!」「今忙しいので」「時間がないので」以外にも、身振りや手振りであっても退去を求める意思表示をしたとみなされます。

 オ 退去妨害(同法第4条第3項第2号)
   具体的には、店舗や事務所等に出向いた消費者が「帰りたい!」との意思表示をしているのにもかかわらず、数人で取り囲むなど物理的な方法や心理的な方法により、契約をするまで返さないなどと妨害をすることです。
   不退去と同様に退去する旨の意思には直接的・間接的を問わず、身振り手振りも含まれます。

 カ 過量契約(同法第4条第4項)
   事業者が勧誘するに際し、契約の目的物の分量、回数又は期間が当該消費者にとっての通常の分量等を著しく超えるものであることを知っていた場合で、消費者がその勧誘により、この消費者契約の申込み、承諾の意思表示をしたことをいいます。

2 権利行使期間
 ただし、この取消しには権利行使期間があり、追認をすることができる時から1年間、当該消費者契約の締結の時から5年を経過したときは時効により消滅するとされています(同法第7条第1項)。

3 従業員の教育を
 貴社の従業員が商品の性能や品質を過大に説明して、大量の契約を締結していると、不実告知、不利益事実の不告知、過量取引に該当するリスクがあります。
 契約が取り消されると、商品が現状で返品され、代金を全額返還しないといけないので、貴社としては相当なリスクがあります。
 また、売り方に問題がある会社であるという評判が広まるレピュテーションリスクがあり、SNS等により問題会社といった書き込みによるイメージダウンのリスクも深刻であると考えられます。