有名な他社の名称の使用リスク

(質問)
 当社は、この度、レストランを新規出店するのですが、店名を私の好きな洋服の有名ブランド名と同じにしようと考えています。法的に何か問題はあるのでしょうか。

(回答)

1 商標権侵害のリスク
 洋服の有名ブランドは、商標登録を行っていると考えられますが、指定役務に飲食物の提供が含まれていないと、貴社がカフェの店名にその有名なブランド名を用いても商標権侵害になりません。
 この場合は、不正競争防止法違反のリスクが問題になります。

2 周知商品等表示混同惹起行為
 商標や商号のように他人の業務に係る商品や営業であることを示す表示である商品等表示のうち、周知な他人の商品等表示と同一又は類似のものを使用することで、自分と他人の営業等を顧客が混同するような行為は不正競争に該当します(不正競争防止法第2条第1項第1号)。
 この混同行為については、商品等の主体を混同する虚偽の混同だけではなく、他人の周知な営業表示と同一又は類似のものを使用する者と当該他人との間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させるいわゆる広義の混同を生じさせる行為をも包含すると解されているので(最高裁判所平成10年9月10日判決)、注意が必要です。

3 著名表示冒用行為
 商品等表示のうち、周知よりも有名の度合いが高い著名な(全国で世間一般に知られている)商品等表示と同一又は類似のものを使用することは不正競争に該当することが規定されています(同項第2号)。
 つまり、商品等表示が周知よりも有名な「著名」になると、周知レベルで要求される顧客の混同の有無は問わず、その著名な商品等表示と同一又は類似の商品等表示を他人が使用することは不正競争に該当し、差止請求や損害賠償請求のリスクが生じます。

4 まとめ
 洋服の有名ブランド名(商標)が、著名とまではいかなくても周知である以上は、それを貴社のカフェの店名として使用することは、親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係等を誤信させるとして、周知表示混同惹起行為に該当すると判断されるリスクがあります。
 また、洋服の有名ブランド名が著名と判断されれば、貴社のカフェがその有名ブランドと何らか関係があると混同されなくても、第2号の不正競争に該当すると判断されるリスクがあります。
 このように他人の商標権侵害を生じなくても、周知又は著名な商品等の使用は、不正競争行為になるため、十分注意が必要です。